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企業が群がる、インスタの消える動画「ストーリーズ」の威力

2017年10月27日(金)15時04分
長瀧菜摘(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

ストーリーズは「インスタ映え」用ではない

ストーリーズの人気が急激に高まった背景にはどんな事情があるのか。インスタグラム米本社でビジネス部門の責任者を務めるジム・スクワイヤーズ氏は「インスタグラムにおけるフィードの位置づけ、使われ方が徐々に変化してきた」ことを指摘したうえで、次のように分析する。

「フィードはここ最近、生活の中のハイライトを投稿するための場になっている。あらゆる写真を頻繁にアップするのではなく、よく撮れているものを厳選したり、凝った編集をしたりして投稿する。とりわけ若年層にこの傾向が強く出ている。一方、もっと別のテンションで、気軽かつリアルタイムに写真や動画をシェアしたいという需要が生まれてきた。そこにマッチしたのがストーリーズだ」(同氏)

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インスタグラムのビジネス部門責任者、ジム・スクワイヤーズ氏は、ストーリーズの気軽さを強調した(撮影:今井康一)

同様の考え方で、インスタグラムに先立ち成功したのが、米国発のメッセージングアプリ「Snapchat(スナップチャット)」だ。ユーザー同士で写真や動画を送り合うことができるが、相手の閲覧後には自動で消える。この気軽さが受け、2011年のサービス開始以来、10代を中心に利用者数を伸ばしてきた。

一方のインスタグラムは、自社サービス内にこの要素を取り込んだ形だ。面白いと思った瞬間を臆することなく投稿できるストーリーズと、ずっと残したいこだわりの写真・動画を投稿するフィードを併せ持つことで、ユーザー接点に厚みを持たせてきたわけだ。結果的にストーリーズの利用者数は、スナップチャット(直近で1億7000万人強)を超えた。

インスタグラムのSNSとしての幅を広げたストーリーズだが、スクワイヤーズ氏は企業が広告宣伝に活用するうえでのメリットも強調する。

「スマホの全画面を占有できるため、(ほかに意識が散らない)没入感の高い見せ方ができる。またストーリーズでは、インスタグラムのフィードはもちろん、(親会社サービスの)フェイスブックとも共通の広告インフラを使っているため、キャンペーンの同時展開や、効果測定に応じ出稿先を変えたり、各媒体の出稿量を調節したりするのが容易だ」

スマホ画面のサイズに合わせた広告が必要

ただ魅力的なツールであっても、万能薬ではない。一般ユーザーにとっては気軽な投稿の場であるストーリーズだが、企業の広告宣伝で高い効果を上げるには相応の工夫がいる。「コンテンツの見せ方をモバイルに最適化することは必須。特にストーリーズはユーザーの閲覧スピードが非常に速いため、訴求したいメッセージを冒頭の数秒に詰め込む必要がある」(スクワイヤーズ氏)。

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