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ジム・ロジャーズ「日本で今後伸びる産業はこの3つ」

2019年2月21日(木)18時53分
ジム・ロジャーズ(投資家、ロジャーズホールディングス会長) *東洋経済オンラインからの転載

もう1つ、投資したい産業がある。農業だ。農業には、地域を問わず世界各地で明るい未来が開けていると私は思っているが、日本は特にそうだと言える。

いま、日本には農業をする人がいない。日本の農業従事者の平均年齢は、約66歳という高齢だ。担い手さえ見つければ、日本の農業には明るい未来が待っている。競争がない業界だからだ。いま、あなたが10歳の日本人の子どもだとしたら、農業をやることも考えたほうがいい。

日本人教授のトンデモない冗談

あるいは移民を受け入れるのもいいだろう。日本がひとたび移民受け入れを表明すれば、多くの人が日本に移住し、農地を買ってそこで働くだろう。多くの日本人は教育を受けて甘やかされているので、農業では働こうとしない。移民なら、農業でも働いてくれる。低賃金で働いてくれる外国人を日本に入れない限り、農業は大きな成長産業にはならないだろう。

日本の農業の問題は、政府によって保護されすぎているという点にある。政治家が農民から票を得るために保護しているからにほかならない。日本コメの価格は、かつては世界市場の5~6倍だった。あまりにも高いので、他国に輸出することができない。

私はかつて日本の教授と、ある大学で討論したことがある。その場で、日本のコメ価格は世界の6倍だと指摘した。価格が高すぎて、日本人ですら買いたくても買えないと述べたのだ。すると討論相手の教授は、「われわれ日本人は外国産のコメを食べることはできない」と言い放った。

続けて、「何世紀も国産米を食べているから、われわれの消化器官は外国産のコメを消化することができない。もし食べたら下水道が破壊され、国中の下水パイプを取り換えなければならない」とも言った。最初は冗談かと思ったが、どうも本気だったらしい。

アメリカに住んでいる日系人はカリフォルニア米を食べている。もし教授の言葉が真実だとしたら、アメリカの下水設備は破壊され尽くしているはずだ。しかし、何事もなく残っている。

日本人による「国産米信仰」は、少々度がすぎるというものだ。大学教授でさえ真顔でこんな話をするのだから、多くの国民は「日本米は特別で、高価なのは当然のこと」と思い込んでいるのではないか。

コメであろうとほかの農産物であろうと、低賃金労働をとり入れて価格を下げない限り、ほかの国と競争することはできない。ブラジルやアメリカと戦えるような大きな農産業は、今後も出てこないままだろう。それでも、日本は低賃金労働をとり入れようとしない。このままでは国民みなが貧しくなり、100年もすれば、日本は消えてなくなってしまう。

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