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「世界最大の保有国」中国は米国債を売却するか? 対米報復の現実度

2019年5月31日(金)11時07分

●中国が売却した場合に米国に生じるリスク

中国が大規模な売りに動けば米国債市場や他の市場が大混乱するという点で、大半のアナリストの意見はそろっている。

突然米国債の需給が変化すれば、価格が下落して、利回りが跳ね上がり、米政府の借り入れコストが増大しかねない。それだけでなく、米国債利回りは消費者や企業の活動に利用される金利の指標となっている以上、社債発行から住宅ローンまで負担が増し、経済成長を鈍化させてしまう。

また世界第一の準備通貨としてのドルに対する国際投資家からの信頼にも傷が付くだろう。

●中国にとっての大量売却のリスク

中国は、米国債を活発に売り込んで価格が急落すれば、自身が持つ残りの米国債の価値が落ちるので、こうした行動には出ないとの見方が大勢だ。

さらに人民元が完全な自由変動制でないため、中国は保有米国債を使って元を特にドルに対して一定の目標圏内に落ち着かせている。一部では、中国が米国債や他の外貨準備を使って元を押し下げ、輸出競争力を高めているとの批判も出ている。同時に、あまりにも大幅な元安を許せば、資金流出といった別の問題が生じる危険がある。

最後に、米国債売りによって米経済が打撃を受ければ、回り回って中国にも悪影響が波及する。中国の輸出の2割近くは米国向けだからだ。

Richard Leong

[ロイター]


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