最新記事

金融

第一生命HD稲垣社長インタビュー「10年後に利益の半分は海外部門の可能性」

2019年7月23日(火)11時06分

第一生命ホールディングスの稲垣精二社長は、低金利が続く国内の金利水準に変化がなければ、10年後には利益の半分を海外部門が占める可能性があると語った。都内で2010年3月撮影(2019年 ロイター/YURIKO NAKAO)

第一生命ホールディングスの稲垣精二社長は、低金利が続く国内の金利水準に変化がなければ、10年後には利益の半分を海外部門が占める可能性があると語った。成長ドライバーは海外と位置付け「第一生命の運用リスクを徐々に落としていくことによって、海外のリスクを取っている。その方がリスク1単位当たりのリターンは高い」と述べた。

第一生命の稲垣社長はインタビューで、今後の成長について、国内事業は金利環境に大きく依存しているとした上で「2020年度までの現在の中期経営計画も、国内生保事業は横ばい。利益ドライバーは海外だ」と語った。

5年前に買収した米保険会社、プロテクティブは、内部資本を活用して2年連続で大型買収を実現。そのほか、豪州やベトナムで実施したM&Aが収益化に結び付いているとし「こういうアクションが今後の利益成長、足元の利益成長につながっている。そのサイクルは続けていきたい」とした。

稼ぎ頭の第一生命の利益の8割を持ち株会社が吸い上げ、すでに進出している米国や豪州などの子会社の増資に充てている。今後も海外子会社への資本投下を通じて「種をまいた海外を育てていく。今後10年は海外部門が利益面でけん引していくと、かなり確度をもって見通している」とした。一方で「中国や欧州での市場参入は考えていない」と慎重な姿勢を示した。

運用リスクと事業リスクのバランスについては、常に資本コストを意識して事業展開していると説明。「例えば国内株を買うためには、資本充足の観点からリスク量の1.7倍の資本が必要だ。このため第一生命の運用リスクを徐々に落とすことで、海外のリスクを取ることができている。その方がリスク1単位当たりのリターンは高い」と話し、他社と異なる経営戦略を採っていると強調した。

大手生保の中で唯一の上場保険会社として、株主であるアクティビスト・ファンドへの対応も余儀なくされている。「市場の監視を受けて、自らの戦略を見つめ直すことができることはむしろプラス。適温のお風呂の方が気持ちいいのかもしれないが、時には熱湯の滝に打たれた方が結果的に事業戦略が洗練されると思う」と語った。

*インタビューは、7月12日に実施しました。

(布施太郎、梅川崇 編集:田巻一彦)

[東京 23日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米AT&T、携帯電話契約者とフリーキャッシュフロー

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3%で予想上回

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利高止まりを警戒

ワールド

メキシコ大統領選、与党シェインバウム氏が支持リード
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中