最新記事

中国経済

欧米のOEM主軸の中国メーカー、米中摩擦で自社ブランド強化にシフト

2019年9月9日(月)18時55分

台北に本拠を置くロボット掃除機メーカーの松騰実業(マツテック)はこれまで10年以上も、フィリップスやハネウェルといった欧米企業とOEM(相手先ブランドによる生産)契約を結び、中国に設立した工場から米国などの海外市場に製品を出荷してきた。松騰の深セン工場で8月撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)

台北に本拠を置くロボット掃除機メーカーの松騰実業(マツテック)はこれまで10年以上も、フィリップスやハネウェルといった欧米企業とOEM(相手先ブランドによる生産)契約を結び、中国に設立した工場から米国などの海外市場に製品を出荷してきた。

こうした戦略が実を結び、同社は世界第2位のロボット掃除機メーカーに成長した。

しかし今、同社は激化する一方の米中貿易摩擦の犠牲になった多くの企業の1つに名を連ねている。

米政府が中国からの輸入品に25%の関税を適用したため、昨年の米国における売上高は20%も落ち込み、中国にある11の組み立てラインのうち2つの閉鎖に追い込まれた。

この輸入関税により、松騰は2017年に「ルンバ」を製造するアイロボットとの訴訟に巻き込まれて既に幻滅を感じていた米国市場に完全に見切りをつけ、昨年12月に事業戦略を転換。自社ブランド「Jiaweishi」をアリババやピン多多(ピンドォドォ)の電子商取引サイトで販売することに注力するようになった。

15年に立ち上げたJiaweishiを今までそれほど重視してこなかった同社だが、深センにある2つの子会社の幹部を務めるテリー・ウー氏は「米中摩擦がわれわれを目覚めさせた。海外市場だけに頼ることはできず、むしろ中国で自社ブランドの足場を築くべきだと気がついた」と語った。

さらにウー氏は「OEM企業でいるのは、毎年適度に雨が降るのを当てにしている農家のようなものだ。自前のブランドを構築し、やや価格を引き下げ、外国ブランドと同品質の製品を提供しないという手はない」と付け加えた。

実際のところ、中国に生産拠点を持つ米国市場向けの事業比率が高い企業にとって、他国に生産を移管するという方法を除けば、自社ブランドの推進以外に戦略上の選択肢は乏しい。

これを長い目で見ると、大手外国企業にとっては市場競争が激化することを意味する。

ベイン・アンド・カンパニーのパートナー、ジェーソン・ディン氏は「かつて提携相手やサプライヤーだった中国企業がライバルになりつつある」と指摘し、外国ブランド側も対応を強化する必要が出てくるとの見方を示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、利下げ前に物価目標到達を確信する必要=独連

ワールド

イスラエルがイラン攻撃なら状況一変、シオニスト政権

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ビジネス

中国スマホ販売、第1四半期はアップル19%減 20
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中