最新記事

米中通商協議

中国、貿易協定「第1段階」合意には米国のさらなる関税撤回を要求

2019年11月5日(火)17時00分

中国が米国との通商協議における「第1段階」の合意の一環として、9月に発動した対中関税を撤回するよう求めていることが、交渉に詳しい関係者の話で、明らかになった。写真は5月20日、北京で撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)

中国が米国との通商協議における「第1段階」の合意の一環として、9月に発動した対中関税を撤回するよう求めていることが、交渉に詳しい関係者の話で4日、明らかになった。

第1段階の合意には、12月15日に約1560億ドルの中国製品に対する関税を発動する計画を取り下げる確約が含まれるとみられている。対象製品は携帯電話やノートパソコンなどが含まれる。

ある米政府当局者は、12月15日発動予定の関税の是非については、通商交渉や今月両国首脳が署名する可能性のある合意文書の一環として検討されていると明らかにした。

別の関係筋は、中国の交渉団は米国が9月1日に発動した1250億ドル分の中国製品への15%の追加関税を取り下げるよう求めていると述べた。それ以前から課されている約2500億ドル分の中国製品への25%の関税についても軽減するよう求めているという。

中国側の主張に詳しい関係者は、中国は引き続き米国に対し、「可能な限り早期に全ての関税を解除」するよう迫っていると説明した。

9月に発動された対中関税の取り下げ要求については、米政治専門サイトのポリティコが関係筋の話として、先に報じていた。また、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米政府が9月1日に発動した衣料品や薄型テレビなどの中国製品への追加関税を対象に、軽減するかどうかを検討していると報じていた。

米非営利教育機関、ユーラシアセンターの中国担当責任者、ラルフ・ウィニー氏は、暫定通商合意の締結は米中両国の経済を浮揚する効果があり、トランプ氏が農家という支持地盤を固めるという重要な結果をもたらすとの見通しを示した。

「通商合意は両国の国益に合致する」とし、「トランプ氏が署名すれば、米国民から非常に好意的に受けとめられるだろう」と語った。

第1段階の合意、構造問題には対処できず

アナリストは、第1段階の合意について、中国による米農産物の購入や著作権・商標に関する知的財産権の保護が柱となり、国有企業への補助金の問題には全く触れられないとの見方を示している。

米国の関係筋によると、中国は文言の一部変更を要求しているが、金融サービスに関する文言も含めて一部の文書は「完成に非常に近い」状態。農業に関する文言は「数十ページにわたるが、ほぼ完成している」という。

同筋は「合意にこぎつけることが双方にとって重要だ」とし、米中首脳が今月中に会談する可能性が非常に高いとの見方を示した。

全米アジア研究所のカウンセラー、チャールズ・ブスタニ氏は「第1段階の合意が成立しても、構造問題にはほとんど対処できないだろう」とし「中国が今行っていることを続けるという概ね現状維持の状況になる」との見方を示した。

*内容を追加しました。

[ワシントン 4日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191112issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月6日発売号は「危ないIoT」特集。おもちゃがハッキングされる!? 室温調整器が盗聴される!? 自動車が暴走する!? ネットにつなげて外から操作できる便利なスマート家電。そのセキュリティーはここまで脆弱だった。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中