最新記事

貿易

新NAFTA協定、米・メキシコ・カナダが修正文書に署名 労働改革監視など

2019年12月11日(水)11時39分

米・メキシコ・カナダの3カ国は、NAFTAに代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の修正文書に署名した。写真は署名文書を掲げる各国代表ら(2019年 ロイター/HENRY ROMERO)

米・メキシコ・カナダの3カ国は10日、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の修正文書に署名した。

署名式にはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、トランプ大統領の娘婿クシュナー大統領上級顧問、カナダのフリーランド副首相、メキシコのロペスオブラドール大統領が参加した。

3カ国は昨年、新協定に署名したが、その後、米下院で過半数を握る野党民主党が労働基準の厳格化などを要求し、3カ国が修正協議を行ってきた。

修正合意には、メキシコの労働改革を監視する米委員会の設置や議会への報告義務、労働改革が進捗しない場合の処分執行などが盛り込まれた。また、バイオ医薬品データを10年間保護する規定が削除された。この規定を巡っては、米国の薬価上昇につながるとの懸念が出ていた。

ライトハイザー氏は「われわれが合意にこぎ着けたのは奇跡以外の何物でもなく、内容の素晴らしさの証左だと思う」と語った。

フリーランド氏も「世界的に通商合意が困難になる中、協力して成し遂げた」として、多国間主義の勝利をたたえた。

トランプ政権と民主党はこの1週間、労働基準などを巡りメキシコと協議を重ねた結果、外部専門家による工場での順守状況点検など、ルールの厳格化で合意を取り付けた。

ペロシ米下院議長(民主党)は記者会見で「政権の当初案よりはるかに優れている」とし、USMCAは下院で採決できる内容になったとの見方を示した。

米共和・民主両党は、新協定には幅広い支持があるとしている。

民主党のニール下院歳入委員長は、議員が文書の一部を精査する方針だが、下院での採決に「不要な遅延」が生じる状況は想定していないと述べた。

ただ、共和党のマコネル上院院内総務は、上院では休会前に協定を取り上げないと発言。採決が年明けに持ち越される可能性が浮上し、早期批准に新たな不透明感が生じた。

一方、グリシャム米大統領報道官は、ホワイトハウスは年内の批准を「強く求めていく」と言明した。

トランプ大統領はツイッターに「USMCA法案は米国史上で最良かつ最も重要な貿易協定になる。皆にとって良い内容だ」と投稿し、「最悪の協定だったNAFTAをついに廃止できる!」と強調した。

USMCA修正協議では、ライトハイザー氏が自動車の原産地規則における域内調達の定義について、鉄鋼やアルミニウムは原料を溶かす工程から北米で行われると新たに規定するよう要求していた。

当初合意された協定では、北米で生産する自動車の部材のうち70%を域内で調達する規定だったが、部材の生産過程については定めておらず、中国などから半製品を調達できる可能性があった。

事情に詳しい業界筋によると、メキシコとカナダは鉄鋼について、7年の移行期間を設けることを条件に新規定に同意した。アルミに関しては、10年後に再検討することを条件に要求が取り下げられたという。

*内容を追加して再送します。

[ワシントン/メキシコ市 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中