最新記事

香港

デモで疲弊した香港経済、新型コロナウイルスが「とどめの一撃」

2020年2月20日(木)11時31分

トム・ベネルさんが香港で営むオリーブオイル販売事業は、昨年の政府抗議デモによって主要顧客であるホテルやレストランから客足が遠のき、痛撃を食らった。写真は10日、マスク姿で通勤する香港市民(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

トム・ベネルさん(46)が香港で営むオリーブオイル販売事業は、昨年の政府抗議デモによって主要顧客であるホテルやレストランから客足が遠のき、痛撃を食らった。彼は今、新型コロナウイルスの感染拡大にノックアウトされることを恐れている。

ベネルさんが経営する創業20年のオリーブズ・アンド・オイルズは、香港で20以上の五つ星ホテルのほか、クラブやデリ、レストランに商品を供給している。

小売り・観光業と貿易・金融業が両輪のように働く香港経済は、デモの影響で10年ぶりの景気後退に見舞われている。そこに新型コロナウイルス感染拡大が加わって観光客が激減し、店舗に出掛ける住民も減った。

商売上がったりのベネルさんは、節約のために10代の息子2人をインターナショナルスクールから退学させた。状況が改善しないようなら、1993年から住み続けてきた香港を離れざるを得ないかもしれない。

「(新型コロナウイルスが)とどめの一撃になりそうだ。恐ろしい。これまでで最悪の事態だ。信じられない」

香港経済は3・四半期連続でマイナス成長となっており、デモの影響で小売売上高は昨年12月に19.4%も減少。1月には過去最悪の約30%減を記録したとみられている。

2月の香港への観光客の到着は1日平均3000人を割り込み、1月の同10万人から急減した。この1月の数字も既に、前年同期の半分以下だった。

極寒の冬

香港レストラン・関連事業連盟によると、100を超えるレストランが閉鎖した。

飲茶レストランのシェフで、飲食業労働者の労組委員長を務めるクォック・ワンヒンさんによると、政府抗議デモの期間に香港のレストラン事業は30―50%落ち込んだが、新型コロナウイルスの影響でこれが70―80%減に悪化したと言う。

「気がめいるよ。この業界の人々は、職を失うんじゃないかと絶えず心配している」

香港観光業評議会によると、旅行代理店や関連産業の活動停止によって4万人超の雇用が脅かされている。

評議会の執行ディレクター、アリス・チャン氏はロイターに対し「非常に心配している。ビジネスがない状態でいつまで持ちこたえられるか分からない」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中