最新記事

日本経済

国内生保、国債投資を敬遠 「ポストコロナ」にらみ運用を多様化へ

2020年4月27日(月)12時44分

国内主要生保の2020年度一般勘定資産運用計画が出そろった。世界的な金利低下が進む中、国債への投資には国内、海外ともに慎重な姿勢をみせているのが特徴だ。2013年5月29日、日銀本店外で撮影(2020年 ロイター/Yuya Shino)

国内主要生保の2020年度一般勘定資産運用計画が出そろった。世界的な金利低下が進む中、国債への投資には国内、海外ともに慎重な姿勢をみせているのが特徴だ。新型コロナウイルスの感染拡大が終息したとしても、金利が急上昇するとの予想は少ない。社債やプロジェクトファイナンス、海外ファンドに投資するオルタナティブなど、各社とも投資先を多様化させて運用難の環境を乗り切ろうとしている。

日本国債の低い「魅力」

日本国債に対しては依然慎重な生保が多い。主な投資対象となる超長期債の利回りが24日時点で新発20年債で0.3%台、新発30年債で0.4%台と相変わらず低いためだ。理想は30年債で1.0%、0.8%でも買いに動く可能性があるが、いずれにせよまだ距離がある。

標準利率の低下にともなって、徐々に低い金利でも負債をカバーできるようになってきているものの、2017年3月以前の標準利率1%時代の負債(保険契約)が依然として大部分を占める。ALM(資産と負債の総合管理)上、一定程度の超長期債は買い入れるものの、積極的な買いには至らないとの運用計画が今年も多い。

日本生命は今年度の新規資金1.5兆円程度のうち円建て債券に1兆円を配分するが、中心は通貨スワップを使って円金利化させた外国社債だ。国債も増加させるが、1兆円の半分以下になる見込み。「日本国債への投資は全体の負債規模からみればわずか。現状の金利水準では本格的な投資に向かう状況ではない」(執行役員財務企画部長の岡本慎一氏)という。

コロナの終息が見えたとしても、金利が大きく上昇するとの見方は少ない。富国生命の財務企画部長、小野寺勇介氏は「世界的な金融緩和により資金が潤沢であることに変わりはない。世界中で運用難が続いている中、金利が跳ね上がる局面があれば、投資資金が入ってくる」と話す。

外国債も「八方塞がり」

国債への投資は外債でも厳しい。為替変動リスクを除くための為替ヘッジを付けると、依然として十分な利回りを得られないためだ。

ドル/円の需給を表すベーシスはプラスに転じ、この部分にだけ関して言えば、国内勢は上乗せ金利を得られるようになった。しかし、依然として日米の金利差が開いており、その分(LIBOR分)を円をドルに換える際には払わないとならない。

日米金利差は24日時点で約1%。ベーシスはプラス0.1%程度なので、3カ月分のヘッジコストは約0.9%になる。一方、米10年債利回りは約0.6%。ヘッジをかけると0.3%のマイナス金利となってしまう。

一方、欧州債投資の魅力も低い。ヘッジコストでいえば、国内勢は上乗せ金利をもらえるが0.2%程度。24日時点の10年債利回りでみて、ドイツはマイナス0.47%、一時国内勢に人気のあったフランスも0.024%にすぎず、投資しても満足な金利を得られない。イタリアやスペインは利回りは高いがリスクが大きい。新興国も同様だ。

欧州債への投資について、明治安田生命の運用企画部長、中野康一氏は「コロナの感染や経済への影響を見極めながら慎重に判断したい」と話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、来週のCPIに注目

ワールド

ロシア、ウクライナ北東部で大規模攻撃準備も 米は支

ビジネス

FRB当局者内の議論活性化、金利水準が物価抑制に十

ワールド

ガザ休戦合意へ溝解消はなお可能、ラファ軍事作戦を注
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 9

    「一番マシ」な政党だったはずが...一党長期政権支配…

  • 10

    「妻の行動で国民に心配かけたことを謝罪」 韓国ユン…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中