最新記事

韓国経済

韓国サムスン電子のイ・ゴンヒ会長が死去 グループ再編やお家騒動の恐れも

2020年10月26日(月)16時35分

韓国最大の財閥、サムスン・グループのサムスン電子は25日、李健煕(イ・ゴンヒ)会長が死去したと発表した。78歳だった。2014年に急性心筋梗塞で入院、その後、療養生活を続けていた。資料写真、2008年4月撮影(2020年 ロイター/Jo Yong-Hak)

韓国最大の財閥、サムスン・グループのサムスン電子<005930.KS>は25日、李健煕(イ・ゴンヒ)会長が死去したと発表した。78歳だった。2014年に急性心筋梗塞で入院、その後、療養生活を続けていた。

サムスンは声明で「李会長は、サムスンをローカル企業から世界をリードする革新企業へと変革させた」とし、「レガシーは永遠に続く」と加えた。

李会長の下で同社は、半導体、テレビ、ディスプレイなどを扱う世界的な企業に成長した。

現在、長男の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が副会長を務めている。

サムスンは葬儀について、親族のみでしめやかに執り行われるとし、日程や場所は明らかにしなかった。

韓国大統領府によると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は葬儀に弔花を贈る計画で、盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長と李昊昇(イ・ホスン)経済首席秘書官を弔問に派遣するという。

文大統領は「李会長が示したリーダーシップは、新型コロナウイルス危機下で厳しい状況に見舞われる韓国企業にとって、素晴らしい手本となり、危機や課題を克服する上で勇気を与えるだろう」述べ、遺族に哀悼の意を表した。

再編の可能性

李会長の死去から一夜明けた26日のソウル株式市場では、サムスン電子と系列会社の株価が上昇した。アナリストらによると、会長死去で株式売却や配当引き上げ、再編への期待感が高まっているという。

李一族の支配維持への意欲と、上場株の保有だけで10兆ウォン(約89億ドル)前後とされる相続税の支払いが、変化をもたらす可能性があると投資家はみている。ただ、どのような変化が起こるのかはアナリストの間でも意見が分かれている。

サムスンC&T<028260.KS>とサムスン生命保険<032830.KS>の株価は一時、それぞれ21.2%高、15.7%高と急伸。サムスンSDS<018260.KS>も買われ、サムスン・エンジニアリング<028050.KS>も一時上昇した。サムスン電子は小幅高で引けた。

子息の李在鎔氏はサムスンC&Tの17.3%株を保有。死去した李会長はサムスン生命保険の20.76%株を持つ筆頭株主だ。

NH投資証券のアナリスト、Kim Dong-yang氏は「相続税は大変な額になる。一族は(サムスン生命保険など)非中核企業の一部の株式を売却せざるをえないのではないか」と指摘。

KB証券のアナリスト、Jeong Dong-ik氏は「一族が相続税を支払えるよう、サムスンC&Tは増配を検討するかもしれない」とした。

大信経済研究所の企業統治の専門家、Ahn Sang-hee氏は「李会長の死去で、サムスングループは(2015年の)第一毛織とサムスンC&Tの合併以来最大の統治再編に直面している」と指摘。

「李在鎔氏にとっては李会長の保有株のほとんどを取得することがこれまでになく重要となっている。問題は税金だ。相続に関連する税金の問題や2人の妹との係争回避が主なハードルになる」と語った。

李会長の3人の子供と妻がどのように財産分与を行うのかは不明で、家族間の対立につながる可能性もある。

ソウル大学校のPark Sang-in教授は「李会長の入院から6年が経っている。したがって子供たちの間で合意されているのであれば、サムスンの継承プロセスは秩序立ったものになるだろう。そうでなければ、お家騒動に発展する可能性がある」と述べた。

サムスンは李会長の死因について詳細に言及しておらず、遺書があるのかどうかについてもコメントを控えた。

*内容を追加しました

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・サムスン、イ・ジェヨン副会長がグループ経営権で謝罪 子供への世襲を否定
・輸出規制に揺れる韓国サムスン、半導体の映画を公開 白地に赤い幽霊の意味は?





イ・ゴンヒ会長の訃報を伝える韓国メディア YTN News / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー

ワールド

焦点:中国農村住民の過酷な老後、わずかな年金で死ぬ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの文化」をジョージア人と分かち合った日

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 8

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中