最新記事

日本経済

緊急事態宣言拡大、経済損失1兆円 延長や全国拡大なれば「日本経済へ最後の一撃」

2021年1月13日(水)16時18分

政府は、緊急事態宣言の対象地域を11都府県に拡大させるが、1カ月程度の発令であれば経済損失は消費を中心に1兆円程度になりそうだ。写真は、都内の繁華街の大画面に映し出された緊急事態宣言の内容を説明する菅首相の会見の様子。2021年1月7日に撮影。(2021年 ロイター/Issei Kato)

政府は、緊急事態宣言の対象地域を11都府県に拡大させる。前回宣言時と比べ制限が緩く影響は国内需要の悪化に限定されるため、1カ月程度の発令であれば経済損失は消費を中心に1兆円程度と、昨年の宣言時より小幅にとどまると民間調査機関では試算している。ただ、1年にわたる経済活動の低下により雇用や企業の体力はすでに弱まっており、見かけの数字以上に影響は深刻なものとなる可能性がある。

経済損失は約1兆円、宣言解除されれば復調

基本的対処方針等諮問委員会は13日、緊急事態宣言の対象地域を首都圏1都3県に加えて大阪、兵庫、京都、愛知、岐阜、福岡、栃木県の11都府県に拡大する案を了承した。これら地域における消費は全国の約6割を占めており、外出自粛や外食需要の減少、サービス消費への影響は大きい。消費の停滞は、関連する設備投資の減少にもつながる。

ただ、今回は飲食店などへの短縮営業要請が夜間に絞られていることなどから、民間調査機関では緊急事態宣言を受けたことによる経済損失は約1兆円程度と、昨年の宣言時の1カ月でのおよそ3兆円程度(大和総研試算)よりはかなり小さくとどまると見込んでいる。急激に落ち込んでいた世界経済が、昨年に比べれば回復していることも支えだ。

緊急事態宣言がなかった場合と比べて、1カ月間の経済損失はSMBC日興証券の牧野潤一・チーフエコノミストが1兆円程度と試算、みずほ証券の小林俊介・チーフエコノミストも1.2兆円程度、大和総研の神田慶司・シニアエコノミストは1.3兆円度と見込む。

みずほ証券では従来1─3月期の成長率を前期比年率プラス0.5%と想定(昨年12月時点)していたが、緊急事態宣言を受けて同3.5%のマイナス成長に転じると試算し直した。

もっとも、緊急事態宣言が解除されれば「宣言前の水準に戻ろうとするため4─6月期には挽回し、その後は年末に向け緩やかに回復していく」(SMBC日興の牧野氏)と予想されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中