最新記事

日本経済

日銀株は買いだ ! ジャスダックでストップ高、金融相場を象徴との見方

2021年3月1日(月)16時57分
日本銀行本店

3月1日、日本銀行の株価が1日、ストップ高を付けた。写真は都内で2015年5月撮影(2021年 ロイター/Toru Hanai)

日本銀行の株価が1日、ストップ高を付けた。ジャスダック市場に上場している日銀株は正確には株式ではなく政府が55%出資する出資証券だが、1980年代のバブル期には最安値から40倍以上の上昇を記録した経緯があるだけに、直近の急騰は金融相場を象徴する動きとの見方も出ている。

1日の日銀株は前営業日比5000円高の3万3000円を付け、値幅制限いっぱいのストップ高となった。動意づいたのは先週の後半。日経平均が1202円安となった2月26日には逆行高となり、昨年6月17日以来、約8か月ぶりに3万円を一時回復した。

ここまでの日銀の株価は、年初の1月5日に昨年来安値2万4610円を付けて80年代のバブル後最安値を更新。その後も日経平均が3万円を回復する中でも、チャート上ではどん底の水準に放置されていた。

目立った材料は見当たらないものの、1つの見方は「好業績の出遅れ銘柄」という点だ。日銀の業績は、今年度上期には株価上昇によるETF運用益の増加から、最終利益にあたる当期剰余金が9288億円と過去最高水準を記録するなど空前の好決算となった。個別銘柄として捉えるのであれば、「最出遅れ銘柄」といえる存在となっていた。

ただ、日銀は、一般的な企業の評価とは異なり、業績を投資尺度とする株価判断の枠外にある存在ともいえる。

ある市場関係者は「バブル期には4年間で株価が40倍になった経緯があり、昔を知る投資家にとっては投機対象の1つとして認識されている」(国内証券)と話す。

日銀株は84年の8月に付けた上場来安値1万8000円から88年12月の上場来高値75万5000円の上場来高値まで約41倍に上昇した。

前週は時期をほぼ同じくして、東証1部ではランドが物色されるなど超低位株が人気を集め、米国のゲームストップ株のような投機的な動きが目立った。足元の株式市場は世界的に調整的な動きとなっているが、日銀の株価動向はマネーゲーム的な色彩が強いとの見方が出ている。

東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏は「日銀株を投資対象として超低位株と同列に論じるのははばかられるが、一般の投資尺度で語れない銘柄だけに、過剰流動性によって引き起こされた金融相場を象徴する動きとみることができる」とした上で「バブルの要素が株式市場のいたる所で散見できるようになってきた」と指摘する。

日銀株は流動性が極めて低い銘柄で、きょうの相場においても、最低売買単位である100単位の売り注文が並ぶ薄い売り板を駆け上がった。そのため、前出の市場関係者は「個人投資家の値幅取り狙いの動きの1つとみることもできる」と分析している。

(水野文也 グラフ作成・編集:伊賀大記)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英利下げはまだ先、インフレ巡る悪材料なくても=ピル

ビジネス

ダイハツ社長、開発の早期再開目指す意向 再発防止前

ビジネス

ECB、利下げ前に物価目標到達を確信する必要=独連

ワールド

イスラエルがイラン攻撃なら状況一変、シオニスト政権
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中