最新記事

消費

「ニーズを満たす商品」では売れない...消費者「優位」時代に生き残るブランドとは

SHIFTING LOYALTIES

2022年2月24日(木)18時00分
メーガン・ガン
ショッピング

コロナ禍でも消費者の購買意欲は衰えず店舗に求める基準は高くなった LISA MAREE WILLIAMS/GETTY IMAGES

<消費に対する考え方が大きく変わるなか、ブランド・ロイヤルティーのカギは顧客が賛同する価値観を示せるかどうかに移っている>

私たちはなぜショッピングをするのか。これはなかなか奥が深い問いだ。そこには経済や人口動態、好み、心理など複雑な要因が絡んでいる。2年以上にわたる新型コロナウイルス感染症の大流行は、常に変化するそのバランスを一段と揺さぶった。

ただ、はっきりしていることが2つある。コロナ禍によって、消費者の選択肢がこれまで以上に広がったこと、そして消費者の重視する要素に大革命が起きていることだ。

それはブランドにとってチャレンジであると同時に、チャンスでもある。消費者の行動が大きく変わっている今、どうすれば「選ばれ続ける」ことができるのか。どうすれば顧客の忠誠(ブランド・ロイヤルティー)を維持できるのか――。

「コロナ禍で、選択肢の広がりに関する消費者の意識は一段と高まった」と、全米小売業協会のシニアディレクター(業界・消費者インサイト担当)を務めるキャサリン・カレンは語る。ロックダウン(都市封鎖)が実施され、安全措置が次々に変わり、お気に入りの店が閉店するなかでも、消費者は新しいブランドを見つけ、新しいショッピング方法(置き配の指定や、店舗の駐車場での受け取りなど)を学んだ。

オンラインショッピングが広がっても、実店舗が消えることはなく、むしろ、これまで以上の魅力が求められるようになった。「消費者が店舗に求める基準が高くなった」とカレンは語る。「自分たちには多くの選択肢があることを知ったからだ」

消費者が見直す「なぜ買うのか」

その選択肢を消費者はあらゆるプラットフォームで活用した。ソフトウエア大手オラクルがアメリカの7500万世帯以上を調べたところ、2020年に新ブランドを試した世帯は43%と、前年の32%を上回った。

一方、経営コンサルティング会社マッキンゼーの調査によると、消費者が新ブランドを試す最大の理由は、入手可能性、便利さ、そして価値だった。なかでも半数近くは、「商品があったから、普段と違うブランドを試した」という、実に気軽な理由だった。お得価格だから、オーガニックだから、地元の店を応援したいから、という回答も見られた。

コロナ禍で、消費者は何をどう買うかだけでなく、なぜ買うのかも見直すようになった。消費行動の専門家によると、ブランドとの感情的なつながりや、個人的・社会的な目的意識が重視されるようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、総裁「状況は正しい方向」 利

ビジネス

FRB「市場との対話」、専門家は高評価 国民の信頼

ワールド

ロシア戦術核兵器の演習計画、プーチン氏「異例ではな

ワールド

英世論調査、労働党リード拡大 地方選惨敗の与党に3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 5

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食…

  • 6

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 7

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中