最新記事

エネルギー

ロシア産ガス、供給停止に備え日本で「プランB」議論 最終的には世界で争奪戦突入か

2022年4月1日(金)16時18分
ロシアの北極近くにあるガスパイプライン

ロシア産の液化天然ガス(LNG)供給停止に備え、日本のエネルギー企業の間では、代替手段を模索する動きが出ている。写真は、ロシアの北極近くにあるガスパイプライン。2019年5月21日に撮影。(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)

ロシア産の液化天然ガス(LNG)供給停止に備え、日本のエネルギー企業の間では、代替手段を模索する動きが出ている。複数の企業はロシア以外のLNGプロジェクトからの購入も視野に交渉の可能性を探っている。日本政府も、電力の安定供給に支障をきたさないよう、業界を越えて融通できる体制作りを促している。一方、これらの対応策だけで不足分を補えるのか慎重な見方も根強い。

日本は年間8500万トンのLNGを輸入しており、このうちロシアの割合は約9%。

複数の関係筋によると、この大部分を占める極東ロシアの天然ガス開発事業「サハリン2」プロジェクトについて、岸田文雄首相や萩生田光一経産相らが3月上旬に協議し、撤退しない方針を決めた。日本は、主要7カ国(G7)での合意に沿って、ロシアへのエネルギー依存度を徐々に引き下げる方針だ。これが日本の基本的な立場だ。


ただ、プーチン大統領が突然、天然ガスの対価をルーブルで支払うよう要求するなど、ロシアのエネルギー戦略は不透明感が強く、読みにくい。「プランB」として、供給が止まった場合の対応策を官民でも議論している。

経済産業省の関係者は、1)電力・ガス会社には2―3週間の在庫があり、この在庫をしっかり持ってもらう、2)電力・ガスの業界を越えて融通し合うよう協議してもらう、としており、企業側に対応を要請しているという。

大手電力の関係者は、在庫確保のため、「買っていないところのプロジェクトから買う、すでに買っているところでは増量してもらう、そういう交渉は鋭意、可能性を探っている」と話す。同関係者は、電力各社とも、調達リスクの管理上、探りは入れているだろう、という。

LNGを使った火力発電は発電電力量の約4割に上る。石炭や石油など他の化石燃料に比べて、二酸化炭素の排出量が少なく、東日本大震災後に原発の稼働率が低下する中でエネルギー源として依存度を高めてきた。

大阪ガスの藤原正隆社長は3月18日の会見で、LNGの調達問題は「国のエネルギー政策そのもの」としたうえで、「スポットからの調達や他のプロジェクトからの購入など最善の努力を行いたい」と話した。

実効性

「プランB」の必要性を再認識させた「ルーブル払い要求」。

G7のエネルギー担当相はこの要請を拒否することで合意したが、プーチン大統領は31日、外国の買い手は4月1日からロシア産天然ガスの代金をルーブルで支払う必要があるとする法令に署名したと明らかにし、支払いが行われない場合は契約を停止するとした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中東欧・中東などの成長予想引き下げ、欧州開銀「2つ

ビジネス

英バーバリー、通年で34%減益 第4四半期の中国売

ビジネス

ABNアムロ、第1四半期は予想上回る29%増益 高

ビジネス

三菱UFJFG、発行済み株式の0.68%・1000
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 8

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中