最新記事

リーダーシップ

期待に応えず、他人に期待しないほうがうまくいく理由

2018年1月20日(土)17時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Lacheev-iStock.

<「期待に応えない」「他人に期待しない」「怒るより、謝る」......いま求められる新たなリーダーシップの形を、「日本一オーラのない監督」中竹竜二氏が提示する>

誰もがカリスマ的なリーダーである必要はない。リーダーシップの形は1つではなく、強い組織をつくるリーダーには誰でもなれる。そのために必要なのは「フォロワーシップ」のアプローチだ――。

そう主張するのは、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターの中竹竜二氏。指導者未経験のまま早稲田大学ラグビー蹴球部の監督に就任し、「日本一オーラのない監督」と言われながら全国大学選手権2連覇を達成。

退任後も、U20(20歳以下)日本代表監督としてワールドラグビーチャンピオンシップでトップ10入りし、企業のリーダー育成に特化したプログラムを提供するチームボックスという会社を設立するなど、多方面で活躍を続けている。

中竹氏によれば、「フォロワーシップ」とは「組織を構成する一人ひとりが自ら考え、行動し、成長しながら組織に貢献するための機会を提供し、環境を整える努力をすること」。

経済が停滞し、情報拡散スピードが速まるなど産業を取り巻く環境が変化している近年、カリスマ的リーダーシップの限界が露呈し、「自ら考える部下」が求められるようになっている。「フォロワーシップ」の時代が到来しているのだ。

その「フォロワーシップ」は、どのようにすれば実践できるのか。ここでは中竹氏の新刊『【新版】リーダーシップからフォロワーシップへ――カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第2回は「第3章 スタイルの確立」より、第1回(自ら考える部下の育て方は「日本一オーラのない監督」が知っていた)の続きを。

◇ ◇ ◇

中竹スタイル2 ■期待に応えない

誰しも、自分に期待をかけられるとうれしいもので、その期待に応えようとする。これはいわゆる本能の一種だろう。また、誰しも、他人から良い評価を得たい、褒められたい、認められたいという欲求があるため、期待には積極的に反応してしまう。また、期待に応えると、相手も喜んでくれることを知っているため、本当はできないと分かっていることであっても、誠意だけでも見せたいという気持ちから、ついついがんばってしまった経験は誰しもあるのではないだろうか。

一方で、組織のリーダーの立場であると、部下や周りの期待に反応することで、その瞬間は喜ばれるものの、その期待自体はいつの間にか膨らんでいく。最初より期待が膨らんでいくと、実はその期待に添うことで、相手を満足させるのが難しくなるという現象が起きてしまう。

リーダーが、目の前(つかの間)の感謝のために周りの期待に応えてしまうと、結局、大きな意味で部下を裏切ってしまうケースがある。

簡単な例を挙げると、私が監督就任1年目に、よく選手から「中竹さん、この練習は単調でつまらないので、清宮さんがやっていたような練習メニューをもっと取り入れてもらえませんか」と言われた時期があった。彼らも、単に私のやり方を批判しているのではなく、強くなりたいという本心から出た正直な意見だったので、期待に応えるために精一杯、準備したことがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中