最新記事

語学

英語は「複雑で覚えにくい」、pleaseで失礼になることもある

2019年4月7日(日)10時00分
森田優介(本誌記者)

詳細は上記の記事に譲るが、取材で見えてきたのは、グローバルビジネスの現場で「新しい形のグローバル英語」が標準になってきているということだ。ネイティブ英語そのものではないが、グロービッシュのようなブロークンな英語よりは、はるかに高度で洗練された英語。発音や言い回しは完璧でなくとも、相手への敬意や社会常識がにじみ出て、顧客の信頼を勝ち取れる「品格のある英語」である。

カップと大野による『英語の品格』は、日本で英語に対する誤解――冒頭に引用したカップの言葉にならえば「伝説」――が存在していることを憂えたものだったかもしれないが、グローバルビジネスの時流に沿った本でもあったのではないだろうか。

シャドーイング・多読・オンライン英会話の広がり

本誌の特集では、日本でグロービッシュと似た発想の「3語でOK」的なアプローチが広がっている現状と、その一方で、日本のビジネスパーソン向け英語教育業界に変化のうねりが起きているという、ある種の「希望」も取り上げている。英語教育業界で「シャドーイング」「多読」「オンライン英会話」といった人気の学習法について、言語学研究に裏打ちされたメソッドが広がりを見せているのもよい兆候だ。

果たして日本人は「品格のある英語」を身につけられるだろうか。特集ではカップに、ビジネスの現場で散見される「日本人が使いがちな品格なき表現」を正してもらった。英語で意思疎通ができていると思っている人でもハッとさせられるような「誌上講義」だが、その1例をここで紹介する。

magSR190406english-insert.png

本誌28ページより

英語は確かに難しい。そしてその難しさは、英語という言語そのものだけに由来するものでもない。100万部超のベストセラー『日本人の英語』(岩波新書)著者で、明治大学名誉教授のマーク・ピーターセンは、特集に寄せたエッセーの中で日本の英語教育の問題点をこう指摘している。

「英文読解に時間を割く代わりに、外国人とのコミュニケーションに役立つ英会話を学ばせよう、と思っているようだが、不十分な文法知識と少ない語彙では片言の会話しかできるようにならない」

それでも、好むと好まざるとにかかわらず、これからのビジネスには本当に通じる英語がますます必要になる。そしてそれは、グロービッシュでも「3語でOK」でも、ネイティブ英語でもなく、相手への敬意や社会常識がにじみ出る「品格の英語」だ。

英語が難しくても、その習得法について難しく考える必要はない。英語学習のメソッドは発展し続けており、役立つ教材も日本にはたくさんある。あとはただ一歩ずつ、努力を重ねていけばいい。

【関連記事】日本人が知らない「品格の英語」──英語は3語で伝わりません
【関連記事】日本人の英語が上手くならない理由 『日本人の英語』著者が斬る30年間の変遷

20190409cover_200b.jpg

※4月9日号(4月2日発売)は「日本人が知らない 品格の英語」特集。グロービッシュも「3語で伝わる」も現場では役に立たない。言語学研究に基づいた本当に通じる英語の学習法とは? ロッシェル・カップ(経営コンサルタント)「日本人がよく使うお粗末な表現」、マーク・ピーターセン(ロングセラー『日本人の英語』著者、明治大学名誉教授)「日本人の英語が上手くならない理由」も収録。


202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米EV税控除、一部重要鉱物要件の導入2年延期

ワールド

S&P、トルコの格付け「B+」に引き上げ 政策の連

ビジネス

ドットチャート改善必要、市場との対話に不十分=シカ

ビジネス

NY連銀総裁、2%物価目標「極めて重要」 サマーズ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 6

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中