最新記事

投資の基礎知識

今さら聞けない、先物取引がマーケットを動かす理由

2019年7月19日(金)11時10分
山下耕太郎 ※株の窓口より転載

●買いヘッジ

将来、株式を購入する予定があるものの、資金の都合などからすぐに買えない場合に先物を買う、という手法です。

たとえば、現物株を100万円買うには、原則として100万円の資金が必要です。これに対して先物取引は、「証拠金」と呼ばれる担保を差し入れて取引を行います(証拠金取引)。つまり、現時点で100万円の資金を持っていなくても、100万円の取引ができるということです。

証拠金より大きな金額が取引できることを「レバレッジ効果」と言います。10万円の証拠金で100万円の取引をすれば、レバレッジは最大10倍になります。

●売りヘッジ

現物株を保有している投資家が、将来の値下がりリスクをヘッジするために先物を売り建てる手法です。ヘッジとしては、この売りヘッジのほうが一般的です。

■利ザヤを追求する「スペキュレーター」

価格が上下に変動するのを利用して利ザヤを追求する取引を「スペキュレーション」といいます。このスペキュレーション取引をする市場参加者を「スペキュレーター」と呼びます。

先物市場では、先ほどのヘッジよりもスペキュレーションのほうが一般的です。たとえば、6月27日時点の日経225先物の参加者は下図のようになっています。

kabumado190719sakimono-chart.png

売り買いともに、外資系証券が上位を占めています。これは取り次ぎしている注文の数なので、実際にどのような投資家が売買しているのかまではわかりませんが、活発に売買されていることがわかります。

このような大量な売買は、スペキュレーションの一種である「アービトラージ」がメインです。先物同士や先物と現物株のサヤ取引を意味し、一時的な価格の歪みが生じたときに、割高なほうを売り、割安なほうを買います。その後、両者の価格差が縮小した時に反対売買をして利ザヤを稼ぐのです。

現物派でも先物に注目すべき理由

先物取引やオプション取引などのデリバティブ(金融派生商品)は、2018年度の売買高が3億6444万枚となり、2017年度から3.1%増加しました。

これは、チャイナ・ショックで相場が大きく動いた2015年度に次いで過去2番目の水準で、米中貿易摩擦などへの懸念から、ヘッジ取引や利ザヤ稼ぎの売買が増えたことが要因と見られています。

対して、2018年度の日経平均株価の終値は2万14円77銭。年間で2,750円(12%)安と7年ぶりに下落しました。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中