最新記事

プレゼンテーション

プレゼンは緊張したほうがいい、人前で話すのに恐怖を感じるのは当然だ

2019年10月10日(木)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

緊張は自分を助けてくれる

幸いなことに、緊張はプラスに働きうる。不安はモチベーションにつながる。説得力のあるストーリーをまとめ上げ、作った資料に間違いがないか確認し、事前に提案を売り込んでおくという準備を万全にしようという姿勢を生み出しうるからだ。ルーシー・ケラウェイはこう説明している。

「不安が惨憺たる結果を防いでくれる。自分では面白いと思っていても相手をからかうような余計な話をしようとしなくなるからだ」

不安はエネルギーにもつながる。緊張すると神経が研ぎ澄まされて敏感になる。気持ちも高まる。こうしたエネルギーがプレゼンを良くすることにつながるのだ。そのエネルギーをプレゼンに生かすようにすればいい。スコット・バークンはこう言っている。

「人前でも平気で話せるようなふりをすると、自分の体が与えてくれる自然なエネルギーが得られなくなってしまう」

ストレスを前向きに捉えれば、自分の考え方を完全に変えることができる。緊張することはプラスになる。健康心理学者のケリー・マクゴニガルは、2013年のTEDカンファレンスでの講演でこう言っている。

「ストレスについて自分の考え方を変えれば、ストレスに対する体の反応を変えられる。ストレスを感じたら、『この状況を乗り切れるように体が助けようとしてくれているのだ』と考えるべきだ」

自信が物を言う

プレゼンで緊張するのはほぼ避けられないとしても、やはり自信をもって臨みたい。緊張と自信というのは、矛盾するように思える取り合わせだ。自信は成功へのカギだ。うまくいくと思いながらプレゼンをすれば、勢いが生まれる。いくらかリラックスもできる。心が開かれた状態になり、意識が自分自身に向かうのではなく、プレゼンの内容と聞く側の人たちのことを考えられるようになる。

その逆のことも起こりうる。心配と不安にさいなまれ、「このプレゼンはうまくいかない」とか「しくじるのはわかっている」「このポイントを忘れてしまいそうだ」などと思ってしまう。

うまくいきそうにないと感じると、自信が薄れてしまう。そして緊張が高まり、不安がさらに強くなる。胸が締め付けられるような状態になり、意識が自分自身に向かってしまう。汗が出てきて、滑らかに話せなくなる。すると早口になってしまい、それに気づいてペースを落とすが、不自然なありさまになっていることに気づく──。

しかし、強い自信と強い緊張は併存しうる。緊張と動揺、不安を感じる一方で、このプレゼンはうまくいくという自信がある状態だ。私は毎年、「シカゴ・トライアスロン」の前にそんな状態になる。水に飛び込む前には不安で心配になる。しかし、最後まで乗り切れるという自信ももっている。もう15年近くやっているので、完走できることはわかっているのだ。

※第1回:名門MBAケロッグの名物教授、初めてのプレゼンは「ニワトリの洗い方」だった

※第3回:プレゼンでスティーブ・ジョブズから学ぶべきでない3つのこと


ニワトリをどう洗うか? 実践・最強のプレゼンテーション理論
 ティム・カルキンス 著
 斉藤裕一 訳
 CCCメディアハウス


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中