最新記事

働き方

コロナ不況でも希望報酬を実現する交渉術とは?

The Right Words to Nab a Raise

2021年1月3日(日)11時30分
ドリー・クラーク(デューク大学フクア経営大学院客員教授)

LIGHTSPRING/SHUTTERSTOCK

<報酬を大きくアップさせるために必要なのは、「ちょっとした準備」と「ちょっとした厚かましさ」>

コロナ禍に見舞われたアメリカでは数千万人が職を失い、経済そのものも大きな打撃を受けている。そんなご時世に転職先の会社と報酬について交渉したり、いま働いている会社に給与アップを求めたりするのはリスキーだと思う人も多いかもしれない。

だが複数の大手企業で人事担当重役を務め、今は賃金交渉に関するコンサルタントとして活動しているエズラ・シンガーに言わせればそうではない。企業は優秀な人材をこれまでになく求めており、ちょっとした準備とちょっとした厚かましさで、働きに見合った給与を求めるのは可能だし、そうすべきなのだ。

シンガーによれば、報酬アップを求める交渉が不調に終わる理由は主に3つある。「私は何百人という企業幹部の採用に関わってきた」とシンガーは言う。面接ではほとんどの場合、報酬の話が出たが、企業側が用意していた最高額で交渉を妥結できた人はほとんどいなかったという。

シンガーによれば、失敗する原因の1つ目は給与の相場を知らないこと。2つ目は話の持ち掛け方を知らないことで、3つ目はノーと言われた際の対応の仕方を知らないことだった。「もしこの3つの問題を解決できれば、報酬を大きく改善するチャンスを手にできる」とシンガーは言う。

本誌米国版と人脈サイト「リンクトイン」のインタビュー・シリーズ「ベター」の企画で、シンガーに報酬アップを目指す交渉のコツについて話を聞いた。

◇ ◇ ◇

相場を知る

求人企業についての情報サイトのグラスドア・ドットコムなどには企業の口コミ情報が集まっていて、最近では企業の大まかな給与水準は外からも分かるようになっている。シンガーは一般論として「企業の規模が大きければもらえる給与も高くなる」と語る。報酬はまた、勤続年数や勤務地によっても変わる。

シンガーによれば「仕事のできる人であれば」、面接で自分と同じカテゴリーの集団の給与データを見せて、「『私の能力から言っても、この中で一番上のほうの給与を頂いても差し支えないと思っています』と言っても不適切ではない」。

話の持っていき方を知ろう

アメリカでは、前職での報酬について企業の側から尋ねることは法律で禁じられている。自分から言うのも駄目だとシンガーは言う。転職後の給与についてどのくらいを想定しているかも言ってはならない。言ってしまえば、それが上限になってしまうからだ。

シンガーは面接の場で「報酬の話をするのは面接を一通り終えて、私が御社に合った人材で、御社に大きな価値をもたらすことができるとお互いに納得できてからにしませんか」と話を持ち掛けるようクライアントにアドバイスしている。採用が現実味を帯びてきた後のほうが、企業側があなたに用意する給与額も高くなるはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中