『北斗が如く』ケンシロウにも倒せない『龍が如く』
Paradise Is a Little Lost
『龍が如く』にあって『北斗』にないのは、間違いなくユーモアのセンスだ。『龍が如く』シリーズの世界は奇妙で際どくて型破り。元ヤクザの桐生一馬が嫌々ながらも他人のトラブル解決や猫カフェの経営など、あらゆるばかげた状況に巻き込まれる。『北斗』にもそうした設定はあるが、そこにたどり着くまでが長過ぎる。
だが欠点だけでなく、素晴らしい点もある。怒りに燃える大男と繊細なガウンをまとったしなやかな女性、不毛な荒地ときらびやかなネオンなど、『北斗』は対照的なビジュアルが素晴らしい。キャラクターモデルやカットシーン、照明のバランスもいい。
漫画の設定に沿って、ボス戦では現実世界ではあり得ない高さの垂直移動が強調されている。文字どおりの大男や超強力な敵に立ち向かうケンシロウは、これを使って戦場を所狭しと派手に動き回る。
エデンには素晴らしいミニゲームもそろっている。コントローラーを駆使してバーで接客する「ラスティネイル」も楽しいし、バイクに乗った悪党たちを鉄骨で殴る「野球」も面白い。
なかでも傑作は『龍が如く』のミニゲームの中でもキャバクラが舞台のものをエデンで再現したゲーム。キャバ嬢と客を組み合わせ、売り上げを増やしていく。1つのテーブルに女性を2人つけることができるなど、変わっているところもある。
『龍が如く』シリーズをまだプレーしたことがない初心者にとっては、スピンオフ版とも言える『北斗』のほうから始めるのは得策ではないだろう。いくつかの欠点はあるものの、『北斗が如く』は単独のゲームとして見れば悪くない。ただ『龍が如く』シリーズがつくり上げた高いハードルは、残念ながらクリアできなかった。
<本誌2018年11月6日号掲載>
※11月6日号は「記者殺害事件 サウジ、血の代償」特集。世界を震撼させたジャーナリスト惨殺事件――。「改革」の仮面に隠されたムハンマド皇太子の冷酷すぎる素顔とは? 本誌独占ジャマル・カショギ殺害直前インタビューも掲載。
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