最新記事

レゴのすべて

「暗黒時代」の大人たちへ、超ディープなレゴの世界へようこそ

Everything Is Awesome

2018年11月22日(木)17時30分
アビゲイル・ジョーンズ(本誌シニアライター)

原点は組み立てる楽しみ

しかし、2000年代前半に会社の財務状況が悪化。「万人受けを目指し、ブランドをあまりに多くの方向に広げ過ぎてしまった」と、ブランド構築を担当するマイケル・マクナリーは振り返る。世界各地でテーマパークのレゴランドを開業し、社内でテレビゲームの開発を始めた。「その過程で、組み立てる楽しみという視点を失った」

自分たちが一番得意なこと――組み立てて遊ぶ玩具を作って売ること――に立ち返ったレゴは、ターゲットとする消費者の半分を無視していたことに気が付いた。女の子だ。

2012年1月に誕生したレゴ・フレンズは、華やかな色合いの女の子向けシリーズ。「ステファニーのアウトドアベーカリー」や「アンドレアのバニーガーデン」など、女の子の憧れを再現したセットが並ぶ。

男女差別や性別のステレオタイプを助長するとも批判されたが、売り上げは予想の2倍。英ガーディアン紙によると、レゴの2012年上半期の純利益は35%増、売り上げは24%増だった。

「うちの娘もフレンズが大好きだ」と、ユンギーは言う。「科学や機械、建築、デザインに興味を持つきっかけになるなら、大いに賛成だ」

「レゴ・フレンズは、女の子にブロックを手に取らせる最高のきっかけになる」と、2児の母でAFOLでもあるアリス・フィンチは言う。「自分にも作れるんだと自信を持てる」

フィンチはレゴの世界では超有名人だ。40万個のブロックで作ったホグワーツ魔法魔術学校は、『ハリー・ポッター』の世界を見事に再現。2012年のブリックコンで専門家が選ぶ最高賞と一般ファンが選ぶ賞を同時受賞した。2013年末にはレゴ仲間のデービッド・フランクと共作で、約20万個のブロックを使って『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する「裂け谷」という場所を作り上げた。

驚くことに、フィンチは構想を練る際にパソコンを使わない。「頭の中で考えて、何枚かスケッチを描いたら、床にブロックを並べてみる」。次は『ロード・オブ・ザ・リング』の都市ミナス・ティリスに挑戦するつもりだ。「彼女はロックスターだ」と、デビッドソンは言う。「彼女の作品には、少女も大人の女性も心を打たれる」

特別な才能はいらない

『ビヨンド・ザ・ブリック』はジョークやアニメーションが満載で、レゴの世界の多彩な人々が登場する。しかし最も興味をそそられるのは、「レゴ・セラピー」の場面だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中