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JKビジネスを天国と呼ぶ「売春」女子高生たちの生の声

2018年12月12日(水)11時35分
印南敦史(作家、書評家)

2016年3月、来日した国連の特別報告者がJKビジネスの禁止を勧告した。JKビジネスが女子中高生の間で「稀なことではない」とし、「いったんその仕事につけば、雇い主や顧客により、しばしば性的サービスを強要される」と指摘。JKビジネスや売春をした少女に面談した結果、「全員がJKビジネスがなくなることを望んでいた」とも述べた。

しかし、これまで多くのJKビジネス業者や女子高生を取材してきた著者は、これに異論を唱える。「稀なことではない」には同意するものの、それは18歳未満に加えて「18歳の高校生についても補導対象」になった2015年1月以前の話。JKビジネス全盛期には女子高生たちのアルバイト先の選択肢のひとつとして機能していたが、現在は客が減り、女の子も減ったというのだ。しかも、「性的サービスを強要」は明らかに間違いだとも断定する。


裏オプという名の性的サービスは、店のシステムにない行為だ。そこには客からの"交渉"はあっても、雇い主の"強要"はない。散歩嬢が「(性行為を)ちょっと我慢すればお金が貰える」と言うように、少女たちはカネのため、自らの意思でJKビジネスに手を染めている。
 だから少女たちは"被害者"ではない。どころか、こうしたマスコミ報道で働き口がなくなるのを最も恐れていた。(「プロローグ」より)

著者が実際に話を聞いてきた少女たちの言葉を確認してみよう。家庭環境などにそれぞれ差があるとはいえ、全員に共通しているのは「無知」で「無自覚」であるということだ。


「両親は幼い頃に離婚しました。私が物心つく前に離婚して、お母さんとはそれから一切、会ってないです。以来、父子家庭で育ちました。アパート暮らしでしたが、貧乏ながらにフツーに幸せでした。お父さんは自営で内装関係の仕事をしてたので、ちゃんと定期収入もあったし。でも、そのお父さんも中二の時に病死しました。だから、それからはずっとひとり。兄弟もいないです。
 エンコーを始めた理由? お客さんにもよく聞かれるんですが、分かんないんですよ。何で始めちゃったんだろう......。でも、最初から、お金を稼ぐことがメチャクチャ楽しかったです。元いた家がちょっと貧乏だったということもあると思うんですが、『お金ってサイコー!』みたいな。
 なんとなく暇つぶしで出会い系を始めたら、エンコーしてるコがいたのがきっかけでした。当時はツイッターも併用してたけど、ツイッターだとケータイ番号登録でアカウントが見つかっちゃう危険性がある。『知り合いかも?』と、検索ロボットでリア友に知らされちゃって、それで一回、自分のアカウントが同級生にバレたことがあったから。それに気づいてからは、必ず出会い系のアプリでやるようにしてる。値段はゴムありでイチゴー(一万五千円)で、半年間で一〇〇人くらいとやりました」(32~33ページより アコ17歳)


「別にお金に困ってたとか、家が借金まみれとかじゃない。遊び代だったり、洋服代だったり単純に遊ぶお金が欲しかったから始めたんです。家庭はフツーですよ。親とは......そんなに仲がいいわけじゃないけど、ちゃんと父も母もいるし、家にも帰ってるし。(中略)
 私の歳だと出会いカフェに入れないし、出会い系サイトも規制が厳しくなったって聞くし、客とやりとりするの面倒だし。もちろんヘルスやデリヘルの方が安心だとは思うけど、働けないから路上で立ちんぼするしかないじゃないですか。少なくても一日三万円は稼げるから、洋服買えるし髪も染めれるし、余ればネイルだってできる。親? 居酒屋でバイトしてることになってます。
 カラダという武器を使えば簡単でした。一日平均二~三人とセックスして、最高一四万くらい稼げました。それでもう、すぐにお金に目がくらんじゃった感じです。だって、この歳で一四万って、マジありえないことじゃないですか。(111~112ページより ユキ16歳)

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