最新記事

インタビュー

「恐竜博2019」は準備に3年! ググっても出てこない舞台裏をお見せします

2019年8月9日(金)12時15分
石﨑貴比古

「問題は化石だけを見ても満足できない人に、いかにして恐竜の姿を見せるかということ。ガイドが骨の化石から推定できること、仮説に至ったプロセスを解説すると、多くの人たちが『そうだったのか、面白いな』と思い、さらに『もっと知りたい』と思ってくれるようになります。

実際には一人ひとりをガイドすることはできないけれど、そんな展示を目指しています。こういう努力の積み重ねが、博物館や学問を継続的に広げることになると思うんです。だからこそ、今回紹介したような皆さんのことをもっと知っていただきたいですね」

dinobook190809-3.jpg

「むかわ竜」 全身実物化石 北海道むかわ町穂別産 むかわ町穂別博物館所蔵

恐竜展の全ての過程に携わる「ゴビサポートジャパン」

『恐竜の魅せ方』で紹介される仕事は「恐竜博2019」の目玉展示にも大いに生かされている。発見から50年を経て全貌が明らかになった謎の恐竜・デイノケイルスと、日本初の全身化石として話題になった「むかわ竜」の復元骨格(デイノケイルスは世界初公開、むかわ竜は北海道むかわ町外では初公開となる)を手がけたのは、高橋功さん率いる「ゴビサポートジャパン」。

化石の発掘、岩石からの削り出し(クリーニング)や、レプリカ製作、さらには欠損部分を補いながらの全身骨格の復元、そして展示と、恐竜展の全ての過程に携わる人は恐竜学者のほかに高橋さんくらいしかいないという。

dinobook190809-4.jpg

デイノケイルス 全身骨格図 © Genya Masukawa

そして、デイノケイルスが捕食者である大型肉食恐竜・タルボサウルスと対峙する展示デザインを手がけたのは「東京スタデオ」の小南雄一さんだ。

「(小南さんは)会議の際にはCCDカメラと模型を使い、来場者の視点から展示がどう見えるかをプレゼンしてくださったり、さまざまなことを提案し、実現してくださいました。写真撮影スポットに恐竜の影が写るようにライティングを調整したり、隕石が落下して恐竜が絶滅した様子を象徴的に展示するため、大きな恐竜はくぐれないけれど、人間のような小さな生き物なら通り抜けられるトンネルのような通路を用意してくださったのも面白い表現です」

dinobook190809-5.jpg

デイノケイルスとタルボサウルスを対峙。照明の当て方も大事なポイント(『恐竜の魅せ方』118ページより)

dinobook190809-6.jpg

来場者から見える2体の姿をイメージ(『恐竜の魅せ方』118ページより)

むかわ竜、デイノケイルスに並び、真鍋さんが「絶対に見逃してほしくない」という小型肉食恐竜・デイノニクスのホロタイプ標本の展示も小南さんの仕事だ(ホロタイプ標本とは一個体の部分もしくは全体で、その種を命名する際の物的証拠のようなもの)。鋭い鉤爪を360度あらゆる角度から見られるよう円筒形のケースに入れ、スポットライトで象徴的なライティングが施されている。会場に足を踏み入れると、まず出迎えてくれるのがこの標本だ。

dinobook190809-7.jpg

「恐竜博2019」で円筒形のケースに入れられ展示されているデイノニクスの後ろあし(ホロタイプ標本) イェール大学ピーボディ自然史博物館所蔵

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中