最新記事

インタビュー

巨大市場への近道は香港にあり! 「オニツカタイガー」再生の立役者、尾山基会長CEOにその道のりを聞きました。

2018年9月3日(月)16時30分
写真:宇田川 淳 文:佐野慎悟 ※Pen Onlineより転載

この夏、アシックスは「オニツカタイガー」ブランドの直営店「オニツカタイガーファッションウォークフラッグシップストア」を、香港におけるファッションシーンの中心地であるコーズウェイベイにオープンしました。日本にある旗艦店と同様"古今東西"をコンセプトに、ヴィンテージ感と未来感、東洋と西洋という異なる要素をミックスさせたこのショップは、中華圏における「オニツカタイガー」ブランド初の旗艦店です。

1949年に日本で創業。その後、世界のランニングシューズ黎明期にトップブランドとして君臨した「オニツカタイガー」は、社名を「アシックス」に変更した77年を機に、一度その役割を終えました。新たに誕生した「アシックス」ブランドは、先進性と革新性を追求しながらスポーツシーンで躍進を続けましたが、着々と力をつけて巨大化した海外ブランドとのマーケティング競争のなかで、ブランドネームの世界的な認知拡大に苦戦したのです。そんな状況のなかで、2002年に世界への突破口を切り開いたのが、自社のヘリテージである「オニツカタイガー」ブランドの復活劇でした。その立役者といえるのが、当時ヨーロッパ法人の社長を務めていた、現「アシックス」会長CEOの尾山基氏。香港旗艦店のオープニングに姿を表した尾山氏に、「オニツカタイガー」再生の軌跡を聞きました。

pen180903_2.jpg

尾山基●1951年、石川県生まれ。総合商社を経て82年にアシックス入社。マーケティング統括部長、ヨーロッパ法人社長などを歴任したのち、2008年に代表取締役社長に就任。11年、CEOを兼任。17年、代表取締役会長CEOに就任。

「オニツカタイガー復刻の構想は、90年台初頭から常に胸の内にありました。しかし当時革靴を担当していた私が、パフォーマンスシューズのアイコンである"ストライプ"をライフスタイルシューズで扱うことが社内的に難しかったこともあり、実際にそのアイデアを形にするまでに、頭のなかで何度もシミュレーションを繰り返してブラッシュアップしていました」

2000年にヨーロッパへと赴任した尾山氏は、現地でレトロなスニーカーに対する新しい需要の波を体感し、満を辞して「オニツカタイガー」ブランドの復刻を実現させました。尾山氏が綿密に構想したブランディング計画の甲斐もあり、「オニツカタイガー」のスニーカーは、すぐさまヨーロッパやアメリカのファッション感度の高い消費者に受け入れられると同時に、日本やアジアの国々でも大きなブームを巻き起こしたのです。

「今回の香港での出店は、世界におけるブランドの存在感を、さらに強固なものへと導いてくれることでしょう。香港には中国本土はじめ、アジアやヨーロッパから年間約6,000万人の来訪者が集まってきます。中国本土の主要都市と比べても、香港に訪れる人々は文化的により洗練されていて、ファッションに対する意識も高い。アジア全体への情報発信力を考えても、香港という土地のポテンシャルは計り知れません」

かつて世界で猛威を振るった日本の虎を、25年間の眠りから鮮やかに呼び覚ました尾山氏は、東西の文化が交錯する香港を足がかりに、目前に広がる巨大なマーケットを虎視眈々と狙っています。

pen180903_3.jpg

pen180903_4.jpg

香港ファッションシーンの中心地、コーズウェイベイの目抜き通りにオープンした「オニツカタイガーファッションウォークフラッグシップストア」。定番のシューズ、ウェア、アクセサリーに加え、「ニッポンメイド」シリーズを常時コーナー展開するアジア唯一の旗艦店です。

オニツカタイガーファッションウォークフラッグシップストア
住所:Shop A&C, G/F Vancouver Mansion, 6 Kingston Street, Causeway Bay
営業時間:11時~22時
不定休
www.onitsukatiger.com/jp/ja-jp

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半で底堅い、34年ぶり高

ビジネス

世界の電動車販売、今年1700万台に大幅増 中国が

ビジネス

インタビュー:過度な円安、消費下支え策も一案 追加

ワールド

アングル:米支援で息吹き返すウクライナ、兵力不足は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中