最新記事

教育

米国、そして韓国でも歪んだ社会を映す受験競争 富裕層目指せるのは富裕層だけ?

2019年3月28日(木)20時00分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)


韓国では社会現象にまでなったドラマ『SKYキャッスル』第2話より、入試コーディネーターが生徒のイェソと会う場面。 JTBC Drama / YouTube

受験がその後の人生を左右すると言っていいほど重要視されている韓国だけに、修学能力試験、人気私立学校の受験などが映画やドラマの題材としても多く取り上げられてきた。2000年製作のドラマ『真実』は、54.6%という驚異的な高視聴率をたたき出したシリアスドラマだった。日本でも『冬のソナタ』で有名なチェ・ジウが主演しており、実際に起きた受験の替え玉事件などを取り上げて話題となった。

教育熱心な親たちがこぞって子供たちを通わせている塾が立ち並ぶ場所といえばソウルの富裕層が集まる街カンナム区のデチドンがあげられる。筆者が以前通勤していた場所でもあり、残業を終えて夜遅く家に帰る時間、塾が終わった子供たちを迎えに来た親たちの高級外国車が道路に並んでいるのをよく見かけた。『妻の資格』はそんなデチドンを舞台に、加熱する受験競争に疑問をもった中年男女が禁じられた恋に落ちるというドラマだった。

受験競争を描いて社会現象を巻き起こした『SKYキャッスル』

この『妻の資格』と同じケーブル放送局のJTBCが2018年11月から放送を開始し、韓国で社会現象を巻き起こすほど話題になったドラマが『SKYキャッスル』だ。タイトルにある"SKY"は「Seoul・Korea・Yonsei」(ソウル大・高麗大・延世大)という韓国の三大エリート大学を指す略語で、物語は一流大学に子供を入学させたいセレブたちが住む架空の高級住宅地「SKYキャッスル」が舞台となる。

第1話では視聴率が1.7%だったものの、その後回を重ねるごとに話題となり、最終話では23.8%(ソウル首都圏では24.4%)を記録。これは非地上波チャンネル歴代最高視聴率となった。この高評価を受け、もともとは16話完結ドラマだったが4話追加され全20話で構成された。このドラマで注目されたのが入試コーディネーターだ。

医学部教授の夫をもつハン・ソジンは、娘のイェソをソウル大学医学部に入学させるべく、カリスマ入試コーディネーターを数億ウォン(数千万円)払って雇う。この入試コーディネーター、キム・ジュヨンがコーディネートするのは勉強だけではない。イェソの交友関係や、ボランティア活動、学校の生徒会選挙まで一見入試に関係しない部分までプロデュースする。

さて、このドラマで注目された入試コーディネーターだが、こんな職業は実際に存在するのか? そうした視聴者の疑問に対して地上波放送局SBSでは、スペシャル番組として入試コーディネーターは本当に存在するのか、1か月にわたって調査した番組を放送した。ドラマでは入試コーディネーターという肩書きで描かれていたが、実際には存在するのは「メンター」と呼ばれるアドバイザーだ。番組内に登場する父母らのインタビューでは「できるものなら雇用したい」と口をそろえて言っている。

KBSニュースでもこのメンターを取り上げ、入試情報会社では1回の相談だけで料金が数十万ウォン(数万円)と報じた。この会社では受験を控えた子をもつ親を対象に説明会を開催している。実際に現在メンターをしているという人物へのインタビューによると、オンライン上や電話でのサポートは1回高くて29万9千ウォン(約3万円)。実際に対面でのサポートではさらに高額になるという。


実在のする"入試コーディネーター"について報じる韓国KBSニュース KBS News / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中