最新記事

消費

新型コロナで増えた消費、減った消費──巣ごもり・デジタル需要は増加、外出型消費は大幅減

2020年5月26日(火)12時05分
久我 尚子(ニッセイ基礎研究所)

巣ごもり型を軸とする消費行動が今後も続く見込み Anastasiia Shavshyna-iStock

<外出自粛の影響で家計消費は減少しても、「デジタル需要」や「非接触志向」など巣ごもりニーズに沿ったサービスへの需要は増している>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年5月13日付)からの転載です。

はじめに──4月の消費者心理は急速に悪化、リーマンショック後の水準を大きく下回る

5月中にも緊急事態宣言が解除される地域も出るようだが、消費者心理は厳しい状況にある。内閣府「消費動向調査」によると、消費者態度指数は急速に悪化している。4月の値は21.6を示し、リーマンショック後の最低値である2009年1月の27.5を5.9ポイントも下回った。

Nissei200522_1.jpg

今後、新規感染者数の減少傾向が続く地域で緊急事態宣言が解除されれば、5月の消費者心理は上向く可能性もある。しかし、ウィルスとの戦いは依然として続いている。さらに、雇用環境が悪化している中では、劇的に消費者心理が改善されることは考えにくい。

新型コロナによる消費の明暗──巣ごもり・デジタル消費が増加、外出型消費は大幅減少

消費者心理の悪化によって、家計の消費支出も減少している。総務省「家計調査」によると、2020年3月の二人以上世帯の支出額は前年同月と比べて実質6.0%減少した。しかし、その内訳を見ると、外出自粛等の影響によって需要が増した領域もあり、明暗が分かれた結果となっている。

図2に、新型コロナの影響を受けた可能性のある主な支出項目を示す。また、図3には、インターネットを利用した購入で支出額の大幅な増減が見られた項目を示す。支出額が増えた項目を見ると、保存の効く食料品やトイレットペーパーなどの「買いだめ的な行動」のほか、「巣ごもり需要」や「デジタル需要」、「非接触志向」の高まりといった消費行動の変化が見える。

Nissei200522_2.jpg
Nissei200522_3.jpg

1|巣ごもり需要の高まり──出前や家飲み、美容家電、ゲームや本等の室内型娯楽、休校でオンライン教育

「巣ごもり需要」については、食の面では、食事代や飲酒代などが減少する一方、出前やビール、チューハイ・カクテルが増加していることから、外食から中食へ、外で飲むのではなく「家飲み」へと、需要が外から中へと移っている様子がわかる。若者を中心にオンライン飲み会なども増えているとも聞く。

また、日用品・美容では、外出を控え、外出時にマスクをする生活では化粧をする機会が減るのか、口紅などのメイクアップ用品の支出額が減少している。また、緊急事態宣言下では多くの理美容店が休業したため、理髪代やカット代が減少する一方、理美容用家電器具(ヘアドライヤーや美容家電を含む)やヘアコンディショナーなどの支出額が増加しており、美容の面でも需要が外(あるいは外向きのもの)から中へと移っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の

ビジネス

米、両面型太陽光パネル輸入関税免除を終了 国内産業
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 8

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 9

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中