最新記事

ヘルス

今改めて問う、日本独自の概念である「生きがい」って何?

2020年12月28日(月)11時19分
前田 展弘(ニッセイ基礎研究所)

Q2. 生きがいの「効果」について、何か言えることはありませんか?


■生きがいを持っている人は長生きする

日々の充実感、幸福感をもたらすなど多様なことが言えると思いますが、ここでは長寿との関係に注目してみたいと思います。

どういう人が長生きする傾向にあるのか、それを調べる長寿科学研究では、生きがいなど心理的要因と生命予後との関係を調べたものも数多くあります。例えば、40~80歳の約3000名を7年以上にわたって追跡した研究では、「生きがいがあるとはっきりいえない者、ストレスがある者、頼られていると思わない者ではそうでない者に比べ、年齢、喫煙、飲酒、高血圧の既往歴を調整しても循環器疾患死亡のリスクが上昇していた」7という結果が確認されます。

また、60~75歳の約1000名を7年半追跡した研究でも、「歩行習慣、睡眠時間に加えて、生きがいがあることが、高齢者の生命予後に重要な影響を与えていた」ことを明らかにしています8。僅かな例ですが、いずれの研究も"生きがいを持っている人が長生き"の傾向にあることを示唆しています。

では、どのようなメカニズムなのでしょうか。「病は気から」という言葉もありますが、楽しいことがある、生きがいがあると心は元気になり、日々の生活も活動的になる、その結果、身体的な面でも健康の維持につながっているということなのかもしれません。

健康のために運動する、食事に気をつけるということも大事ですが、このように「楽しみを持つ、生きがいを持つ」ということが健康の維持や寿命の延伸につながる可能性があるということも意識しておくことが大切でしょう。心を元気にさせる楽しみ、生きがいを見つけることが、健康で長生きするための一つの予防策になると考えます。

Q3. 生きがいの見つけ方について、何か参考になることはありませんか?


■『Wish List』で人生100年を豊かに!

そうは言えども、なかなか生きがいと言えるほどの楽しみは見つからない、特に高齢期を展望したら不安ばかりが募ってしまうという人も少なくないかもしれません。そのような場合、例えば、65歳からの『Wish List(願いごと・やりたいこと楽しみリスト)』を作成してみてはどうでしょうか。

────────────────
7 坂田清美、吉村典子、玉置淳子、橋本勉「生きがい、ストレス、頼られ感と循環器疾患、悪性新生物死亡との関連」(「厚生の指標」第49巻第10号、2002年9月)より
8 関奈緒「歩行時間、睡眠時間、生きがいと高齢者の生命予後の関連に関するコホート研究」(「日衛誌」第56巻第2号、2001年7月)より

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

海運マースク、第1四半期利益が予想上回る 通期予想

ビジネス

アングル:中国EC大手シーイン、有名ブランド誘致で

ビジネス

英スタンチャート、第1四半期は5.5%増益 金利上

ワールド

トルコ製造業PMI、4月は50割れ 新規受注と生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中