最新記事

日本社会

意外にも名古屋の名物老舗喫茶はやっていない 愛知の「過剰おもてなし」モーニングセットの謎を追う

2023年2月27日(月)12時40分
大竹敏之(ライター) *PRESIDENT Onlineからの転載
モーニングセット

名古屋のモーニングセットの定番といえば小倉トースト


愛知県の喫茶店では、コーヒーを頼むとトーストやゆで卵が無料でついてくる「モーニング」というサービスがある。これは、いつどのようにして始まったのか。ライターの大竹敏之さんの著書『間違いだらけの名古屋めし』(KKベストセラーズ)より、一部を紹介する――。


なぜ名古屋には喫茶店がたくさんあるのか

名古屋市内の喫茶店軒数は3111軒(2016年経済センサス)。

同じ年の人口230万4794人をもとに1000人あたりの軒数を割り出すと1.35軒となり、図表1でトップに挙げられる高知県の1.46軒に迫る数字になります(もっとも高知県も高知市でデータを出すともっと高くなりそうですが)。これは全国平均の2.5倍にあたります。

図表1 全国の喫茶店比較
出典=『間違いだらけの名古屋めし』より

なぜ名古屋にはこんなに喫茶店が多いのか?

よくいわれる理由が、土地代の安さ、そして企業の倹約志向です。

1960~70年代の喫茶店の開業ラッシュの時代、名古屋は都市部としては比較的不動産相場が低く、脱サラ組をはじめとする個人でも店を出しやすかったといわれます。

そしてもうひとつの理由が名古屋企業の倹約精神。「社内に応接室なんてもってぁにゃぁで(もったいないから)すぐそばの喫茶店で商談しやエエがね」。

中小企業の社長たちのそんなシブチン気質のため、オフィス街などで多くの喫茶店が必要とされ、また繁盛したというのです。

近くの喫茶店=会社の応接間

名古屋の喫茶店ではコーヒーチケットも普及していて、10枚綴りで一杯分お得になるなど、常連の必須アイテムとして重宝されています。

喫茶店にあるコーヒーチケット
 
喫茶店にあるコーヒーチケット(写真=『間違いだらけの名古屋めし』より)

これを自分で携帯するのではなく、店にあずけて壁に貼っておいてもらうのもユニークな習慣です。リピーターにとっておトクなこともさることながら、応接室代わりに利用する企業にとっても都合のよいツール。これなら取引相手を前にして財布を出す必要がなくスマートです。

名古屋でのコーヒーチケットの浸透は、喫茶店を商談に使う常連の企業が多かったからとも考えられます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロ中、ガス輸送管「シベリアの力2」で近い将来に契約

ビジネス

米テスラ、自動運転システム開発で中国データの活用計

ワールド

上海市政府、データ海外移転で迅速化対象リスト作成 

ワールド

ウクライナがクリミア基地攻撃、ロ戦闘機3機を破壊=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中