「酒は百薬の長」は間違いだった 最新研究で判明「酒と健康は共存できない」
*写真はイメージです AndreyCherkasov - shutterstock
お酒と健康にはどんな関係があるのか。科学ジャーナリストの生田哲さんは「飲酒は健康のメリットになる作用もあるが、比較するとデメリットのほうが大きい。最新の研究では健康になる適量は存在しないとされている」という――。
酒の"ちゃんぽん飲み"は二日酔いと関係ない
人類と酒の付き合いは長い。古代からである。みなさんもアルコールを飲む機会があるに違いない。アルコールについて、さまざまな説が流れている。たとえば、アルコールは健康にいいとか、悪いとか、ビールをワインの先に飲むと二日酔いしないとか、二日酔いには迎え酒が効果的とか。そこで、アルコールに関するホントとウソを検証していくことにする。
【神話】
ワインとビールをちゃんぽんで飲むと悪酔いや二日酔いする
日本では、ワインとビールをちゃんぽんで飲むと悪酔いや二日酔いする、といわれる。「ちゃんぽん」とは、ビール、ワイン、日本酒、ウイスキー、焼酎など、さまざまな種類のアルコールを飲むことを指す。悪酔いも二日酔いも、飲酒によって頭痛、吐き気、めまいなど、気分が悪くなるのは同じである。
細かいことをいえば、二日酔いは酒を飲んだ翌日の状態を指し、悪酔いは酒を飲んだ当日も含まれる。同じちゃんぽんでも、欧米ではより詳細に、ちゃんぽんにする酒類の順番まで気にしていて、ワインの前にビールを飲むと二日酔いしない、との言い伝えがある。
【科学的検証】
ウソである。
アルコール類を飲む順番は二日酔いに影響しないだけでなく、二日酔いの程度にも影響しないという明確な回答が、2019年、ドイツとイギリスの共同チームによって報告された(*1)。
(*1)Köchling J et al. Grape or grain but never the twain? A randomized controlled multiarm matched-triplet crossover trial of beer and wine. Am J Clin Nutr. 2019. Feb 1, 345-352. PMID: 30753321
二日酔いの原因は完全には解明されていない
友人たちが久しぶりに集まってパーティが開かれた。最初にビール、次にワイン、そして焼酎またはウイスキーのオンザロック。杯を重ねるうちに、つい飲み過ぎてしまう。私たちの多くが経験することである。問題は、楽しかった夜の翌日である。頭がガンガンし、気分が悪く、汗が出る。寝床でもう二度と酒を飲まないと誓う。この嫌な二日酔いを防ぐ方法があれば、どんなに素晴らしいことか。
日本では、ワインとビールをちゃんぽんで飲むと悪酔いや二日酔いするといわれる。欧米ではより詳細に、「ワインよりビールを先に飲めば、二日酔いしない」などといわれてきた。欧米人もまた、二日酔いに悩まされてきたことがわかる。しかも歴史をたどれば、欧米の格言は中世からいわれているので、きっと真理が含まれている、と思う人は多い。だが、これが間違いであることがドイツのグループの研究によって明らかとなった。
古代から二日酔いはあったにちがいないが、今でもナゾが残っている。ナゾというのは、二日酔いはアルコール飲料の飲み過ぎによるのだが、その症状があらわれるのは、血中アルコール濃度がゼロになってからである。
二日酔いの主な症状は、頭痛、吐き気、疲労感である。その原因は、おそらく、脱水、代謝、免疫系の応答やホルモン系の混乱によると考えられる。二日酔いによって私たちの生産性は著しく低下する。週末ならベッドやソファで横になる。気分が悪く、外出することもなく、ネットフリックスやYouTubeを見て過ごす。平日ならたとえ出勤したとしても能率が落ちること、この上ない。