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医師500人が支えるオンライン病気事典「MEDLEY」の狙い

2017年8月24日(木)17時23分
WORKSIGHT

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医療を自分ごとにするには、まず知ること。患者の視野が広がれば治療の幅も広がる


2015年のMEDLEY公開以降、今では病気については1400以上、医薬品は3万、医療機関は16万に上る情報を集約する事典に成長しました。ユーザーである患者からは「病気や治療法について理解が深まった」「ここまで親切に書いてあるサイトは初めて」といった声が寄せられています。

中には「手術するかどうか悩んでいたけれども、治療法が他にもあると知りました。主治医に聞いてみます」という反応も。まさにそうやって使ってほしいという活用の仕方に手応えを感じました。

病気をきちんと知って、必要に応じて担当の医師に質問するということは、患者や家族が病気と向き合い、自分ごととして真剣にとらえるようになったことの表れでしょう。それまでも当然、当事者の認識はあったはずですが、知識がなければ医師のいうことをただ鵜呑みにすることになってしまいます。「医者が何とかしてくれるはずだ」と主体性を欠いたままでは、治療で症状が良くなればいいけれども、悪化すれば「医者が悪い」となってしまう。それが医療への不信につながると思います。

医療を自分ごとにするきっかけは、まず知ること。知らないことは自分ごとにならないし、向き合うこともできません。患者の視野が広がることで、治療の選択の幅も広がっていくはず。そしてそれは私たちの考える「納得のいく医療」の1つのあり方なんです。

MEDLEYが定番の参考書になれば医師にもメリットがある

患者のリテラシーの向上は、医師にとっても望ましいことです。MEDLEYのスタート前は「医者の権威が脅かされる」という反発があるかなと覚悟していました。でもこれまでに、「患者が病気のことを知るとは何事だ」と面と向かって言ってくる人はいません。言えないだけかもしれないし、言っていても私の耳に届いていないだけかもしれませんが(笑)。

多くの医師が、「患者さんも自分の病気についてきちんと知ってもらいたい」と言っています。グーグルがある以上、患者が無知のままでいることは今の時代あり得ません。医師もそう思っているけれども、問題は患者がアクセスしている情報の信頼性です。

ウェブには正しくない医療情報が大量にあると先ほど言いましたが、間違った情報を仕入れてきた患者に対して医師が訂正しようとすると、「でもネットに書いてありました」と反論される。どうせ得るなら正しい情報を得てほしいと医師も思っているんです。MEDLEYが定番の参考書として認知されれば医師にも恩恵があるということで、そんなところにも協力医師の増加の要因があるのでしょう。

MEDLEYの立ち上げ時、医療機関の外来向けのノベルティとして付箋を作りました。「本日お話しした病気」と印刷してあって、そこに担当医が病名や治療法を書き込んで患者に渡してもらうわけです。患者がMEDLEYでそれを調べて復習したり、お年寄りの患者にはご家族に渡して読んでもらうようにお願いしたりといったときに便利です。そのうえで質問があれば次回の外来で質問してもらう。この付箋は評判がいいですよ。患者との相互コミュニケーションを深めていこうと医療機関も努力しているんです。

【参考記事】「お金のために働くな」とファンドマネージャーは言った

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