最新記事

インターネットを超えるブロックチェーン

グーグルやフェイスブックから個人情報を自分で守る防衛策

POWER TO THE PEOPLE

2018年11月27日(火)16時20分
デービッド・チョム(eキャッシュ開発者、個人向けブロックチェーン・プラットフォーム開発企業エリクサーCEO)

ILLUSTRATION BY ALEX FINE

<電子マネーの開発者デービッド・チョムが語る、ブロックチェーンを使った未来型セキュリティー対策>



※12月4日号(11月27日発売)は「インターネットを超えるブロックチェーン」特集。ビットコインを生んだブロックチェーン技術は、仮想通貨だけにとどまるものではない。大企業や各国政府も採用を始め、データ記録方法の大革命が始まっているが、一体どんな影響を世界にもたらすのか。革新的技術の「これまで」と「これから」に迫った。
(この記事は本誌「インターネットを超えるブロックチェーン」特集より転載)

少し前まで、朝は自分でコーヒーを入れて、新聞を読んでいた。今では毎朝スマートフォンにニュースが押し寄せ、インターネットにつながったスマートコーヒーメーカーが自動的にエスプレッソを入れてくれる。

使い勝手のいいデジタル機器の登場で、生活はぐっと便利になった。だが利便性と引き換えに、私たちは検索ワードや訪問したウェブサイトなどの情報を差し出している。そこで使われるプログラムなどは仕事や家事を楽にする一方、私たちをある社会集団に──時には間違って──分類する。アクセスを許した情報がいずれ、私たちに不利な形で利用されないとも限らない。

銀行やSNSから個人情報が流出する事件は後を絶たない。個人情報を管理する権限はユーザー自身が持つべきだと、多くの人が考え始めている。

心配すべきなのは、メールの文面といったネット上のやりとりの中身だけではない。やりとりに不随するメタデータからも、私たちの行動パターンは読み取れる(メールでいえば、発信元や送信先の情報などがメタデータ)。メールと決済のメタデータをたどるだけで、その人の宗教から政治的信条、健康状態や交友関係までが分かってしまう。

そんなデータ乱用の防止策として期待されるのが、ブロックチェーンだ。

ブロックチェーンは、グーグルやフェイスブックのような企業のサーバーが管理しているわけではなく、分散型のネットワークだ。チェーン内の全ての情報にアクセスできる組織は存在しない。他人のメタデータを追跡して広告会社に売ったり、政府に渡したりすることもできない。SFドラマが描くダークな未来社会のように、個人情報を基に人々が格付けされることもない。

グーグルやフェイスブックの代わりにブロックチェーンを利用したサービスに乗り換えれば、個人情報を悪用される危険は大幅に減る。ブロックチェーンはメッセージのやりとりや買い物だけでなく、契約や資産管理にも使える。ただし広く普及するには技術の進化が必要だ。クレジットカードのように瞬時に決済ができて、プライバシーを守る暗号機能が充実し、数十億の利用者に対応できる──。

そんなプラットフォームが構築され、多くの人々が利用するようになれば、個人情報は莫大な恩恵を受けるだろう。

【関連記事】1分で分かる「ブロックチェーン」の概念と仕組み
【関連記事】音楽、働き方、マグロ......ブロックチェーンが変える6つのこと

<2018年12月4日号掲載>

※12月4日号(11月27日発売)「インターネットを超えるブロックチェーン」特集はこちらからお買い求めになれます。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:米支援で息吹き返すウクライナ、兵力不足は

ビジネス

NZ中銀、自己資本規制見直しの必要性否定 競争当局

ワールド

ガザ戦闘、人道状況に「著しい悪影響」 米国務省が人

ワールド

ロシアがウクライナに無人機攻撃、南部オデーサで7人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中