最新記事

AI

対決 AI vs 人間 勝利を手にしたのはどっちだ!?

2021年3月26日(金)19時52分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

もはやAIが人間を凌駕するのは時間の問題? Ihor Biliavskyi - iStockphoto

<さまざまな分野で活用が進むAI。ビッグデータの処理などとは異なる分野でも人間を凌駕するのか?>

今年の1〜2月、韓国の地上波放送SBSで放送されたAIとの対決番組『世紀の対決─AI vs人間』が大きな話題を集めた。

これまでもAIと人類は、ボードゲームをはじめ多く行われてきた。特に世界的にも注目されたニュースといえば、2016年 囲碁界最強の一人と呼ばれたイ・セドル棋士がグーグル傘下のITベンチャーが開発したAI「AlphaGo」との戦いに敗北したことだ。この"事件"は多くの人びとに衝撃を与えた。

今回の特番は、1月29日から毎週金・土曜の午後10時~というゴールデンタイムに編制された旧正月のスペシャル番組で、これからのAIの可能性を探る意味と視聴者の関心を集めるのに十分な5つのジャンルで勝負が行われた。

対決のジャンルは歌、ゴルフ、プロファイリング、モンタージュ描き、株式投資等が用意され、これまでのボードゲームなど勝敗が白黒はっきりした分野だけでない点でも注目が集まった。

特に、芸術分野に関しては「AIなど機械に人を感動させる力があるものか」という人間の負けられない意地がある。映画業界以外知らないで生きてきた筆者も、総合芸術といわれる映画とAIの共存には興味があるものの、やはり核となる台本や演出、演技などをAIに頼ってしまう世界を想像すると若干抵抗がある。

そういった意味で、特に芸術分野である「歌対決」に興味があった。かつてNHK紅白歌合戦に没後30年として"歌謡界の女王"美空ひばりのAIが出演し、『あれから』という新曲を歌い上げたが、視聴者からは批判の声も少なくなかった。故人の歌声を本人の意思に関係なく利用した点に関しては、故人の尊厳の是非についても論議された。

AIがフレディ・マーキュリーの声でK-POPを歌う

newsweek_20210326_190558.jpg

フレディAIがK-POPを歌う 달리 [SBS 교양 공식채널] / YouTube

今回の放送では、番組の中盤にイギリスのロックバンド「クィーン」のボーカルであり、1991年に亡くなった故フィレディー・マーキュリーが、AIによって韓国人歌手ジョンインの歌『オルマッキリ』のサビ部分を歌う一幕も放送され話題となった。フレディー・マーキュリーは韓国語を話せるわけでもなく、今まで韓国語で歌った曲も発表されていないが、英語で歌うオリジナル音源からAIは学習し、国境と言語を越えた歌声を見事に復活させた。

また、番組最終回には100日間にも及ぶ作曲対決も放送された。44年間、韓国演歌トロットを作り続けてきた作曲家キム・ドンイルと、光州科学技術大学院が開発した作曲AI「EVOM」が新曲を作って発表するという。

従来の作曲AIたちは、既存の曲を大量に短期間で学習し、それをパターンに制作していたが、なんとこのEVOMは、数式化した音楽理論を覚えさせ、さらに作曲した部分で問題があれば人間がフィードバックし、AI自身がより良いものを作っていくという制作スタイルなのだという。

100日目の最終日、出来上がった2曲がスタジオで披露され、どちらがAIもしくは人間の曲か、事前に聞かされていないパネラーたちが当てるという対決が行われた。結果は、やはり人間は人間の曲を見抜くことが出来たわけだが、EVOMの渾身の一曲は見事なものだった。

株取引でAIと対決

そして、音楽と同様に注目を集めたのが、やはり多くの人の関心の高いお金、「投資」対決である。番組予告当初、投資分野と聞いたときにはAIの圧勝を予想した。投資は情報量と過去データがものをいう。いくらなんでもAIの情報分析量にはかなわないと思ったからだ。きっと大半の視聴者もそうだっただろう。

AI代表として登場したのは株式投資AI「RASSI」だ。開発者キム・ドンジン氏によると、このRASSIは、人間が寝静まった夜中にその日の株式市況をおさらいし、膨大な情報を学習しているのだという。放送では一人学習しているAIの姿も映されたのだが、一般の人間には理解できない言語がパソコン画面いっぱいに次々と流れていく異様な光景だった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

メキシコ当局者、中国EV現地生産に優遇策適用せず 

ワールド

WHOと専門家、コロナ禍受け「空気感染」の定義で合

ワールド

麻生自民党副総裁22日─25日米ニューヨーク訪問=

ワールド

米州のデング熱流行が「非常事態」に、1カ月で約50
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中