最新記事
SNS

「あの国」からの攻撃で日本の個人情報が大量流出...LINEヤフーのずさんな管理で9600万人が危険にさらされる

DEJA VU ALL OVER AGAIN

2023年12月15日(金)16時51分
山田敏弘(国際ジャーナリスト)
LINE, LINEヤフー, 個人情報, 韓国, サイバー攻撃,ネイバー

「国民的インフラ」の開発は韓国ネイバー頼みだが TOMOHIRO OHSUMI/GETTY IMAGES

<44万人の個人情報流出で浮かんだのは、LINEヤフーが過去の反省を生かせていない疑いと、国外頼みの開発の危うさ。日本政府が「国民的インフラ」の手綱を握るべきなのか>

日本で約9600万人が利用する通信アプリLINEが、サイバー攻撃による不正アクセスの被害に遭ったと11月27日に発表された。アプリなどの利用者44万件の個人情報が流出した恐れがあるという。

もはや生活に欠かせない重要な通信インフラが国外から不正アクセスされた深刻な事態が明らかになったのだが、このニュースはそれほど大きな騒ぎになっていない。

その最大の理由は、LINEが過去にも情報管理で世間を騒がせ、ユーザーがそれに慣れてしまったからだ。しかし、この問題を軽く見るべきではない。

最初にLINEの情報管理が大々的に批判されたのは2021年3月のことだ。業務委託していた中国の関連会社の従業員が、日本のユーザー情報にアクセス可能だったことが判明。これを受け、外部有識者による調査報告書が「グローバルな事業運営を前提としつつ、適切な横のガバナンスを確立し強化していくこと」を提言した。

サイバー攻撃を仕掛けたのは誰か

ところが今年8月に再び「横」のガバナンス、つまり組織内部のつながり不足が露呈する。LINEの開発を担う韓国のネイバー社がヤフーの検索エンジンを利用するユーザーの約410万件の個人情報を利用者に十分周知せずに入手していたことが発覚。日本の規制に照らせば「安全管理措置に不十分」な行為であり、ヤフーは行政指導を受けた。10月にネイバーなどが大株主となり、LINEとヤフーの合併で新会社「LINEヤフー」が発足する直前だった。

そして今回の不正アクセスである。10月9日以降に韓国のネイバー社を介してLINEヤフーへ不正アクセスがあり、日本のユーザー情報が盗まれた。ただ、報道の情報だけでは腑に落ちないことがある。

まず、誰が不正アクセスをしたのか。総務省関係者は筆者の取材に対し、「攻撃者は中国だ」と指摘する。これだけでも深刻だが、さらに見逃されている重大な問題は、ネイバーがLINEの日本人ユーザー情報にアクセスできていること。だからこそ、中国の攻撃者が韓国のネイバーを介して不正アクセスできたのだ。

21年3月の問題では、LINEが日本人ユーザー情報をネイバーのシステムに保存していたことが判明した。つまり日本の法律が届かない韓国で日本人の個人情報が勝手に利用され、日本の安全基準を遵守させることもできない状態だった。批判を浴びたLINEは、日本人のデータは全て日本のサーバーに移動すると発表している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド、インフレに「たちの悪い」上振れ見られず=首

ビジネス

東レ、前期純利益見通しを下方修正 風力発電翼で減損

ワールド

スウェーデン中銀、8年ぶり利下げ 年内さらに2回見

ビジネス

英国株の最大保有者、上場規則緩和を推進するロンドン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中