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世界経済

アメリカがグローバル経済の牽引役に返り咲く日

2015年10月7日(水)15時06分
アフシン・モラビ(本誌コラムニスト)

 そんな先の見えない世界でアメリカ経済だけが堅調だ。今年第2四半期のGDPは年率換算で3・7%増、新興市場の「高成長国」のほとんどを上回った。経済の年間成長率はEUの3倍、日本の4倍。失業率は7年ぶりの低水準に。世界の企業時価総額ランキングでは上位10社中9社を米企業が占める。

 最後のデータは非常に重要だ。アメリカの経済が世界一打たれ強いのは、アメリカの企業が世界一元気で革新的なおかげ。シェール採掘技術の水圧破砕法からインターネット、スマートフォンまで、世界に影響を与え、産業を根底から変えている技術革新のほとんどは、アメリカとアメリカの企業で生まれている。

 実はアメリカには「秘伝のソース」があるのだ。材料は5つ。革新と進取の気性に富む文化、規律ある(つまり信頼できる)資本市場、産学連携の研究開発、言論の自由と民主主義、インフラ整備で一歩リードした点(その後の老朽化で優位はなくなりつつあるが)。さらに言うなら第6の材料はもちろん、(活力ある経済に目を付けた)外国の侵略から国を守る軍事力だ。

 アメリカと呼ばれる人口約3億2000万の広大な土地は、グローバル経済にとって今も過去50年間と変わらない重要性を保っている。逆さになった世界地図が元どおりになった今、アメリカこそ最も注目すべき「新興市場」かもしれない。

[2015年10月 6日号掲載]

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