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タブーを覆した65歳 「真の自由な女性」ブリジット・マクロンの魅力を伝記著者が明かす

2018年07月31日(火)13時30分
西川彩奈(フランス在住ジャーナリスト)

大統領夫人となった今、ファッションからもその精神が垣間見ることができる。カーラ・ブルーニ(ニトラ・サルコジ元仏大統領夫人)やメラニア・トランプ(ドナルド・トランプ米大統領夫人)はファーストレディーになってから、コンサバなスタイルに転換した。一方、ブリジット・マクロンは、まるで『私は私よ』と言うかのように、式典でミニスカートを着用するなど、自身のスタイルをまったく変える気配がない。それでも彼女が極めてエレガントなのは、『ファッションは、相手への敬意を示す要素』という礼儀正しい心持ちが常にあるからだ。

カタチより中身を重視し、『自分は自分』という型にはまらない精神をもっている。それこそが、彼女がどんな状況でも自由な秘訣かもしれない」

キーワード2:モダニティー(現代的)

「ブリジット夫人の友人の証言では、マクロン大統領は、活発で冗談が好きなブリジット夫人のことを、ときに娘のように感じることがあるそうだ。そして彼女は、新時代のフェミニズムのアイコンでありながら、伝統的な女性でもある『二面性』を持つ女性だ。

一般的にカップルにおいて、女性が男性より年上の場合、中傷を受けることがある。フランソワ・オランド前大統領には17歳年下の不倫相手がいたが、その年齢差をだれも指摘しなかった。一方、ブリジット夫人は、現地メディアに『マクロン大統領は祖母と一緒にいる』など、数多くの中傷を受けた。しかし、それを乗り越え、彼女はこのタブーを突破して女性に勇気を与えた。一方で、夫の政治活動をサポートするために教師の仕事を辞めるという、伝統的な女性の一面もある。

マクロン大統領は、右であると同時に左でもある、という自身の政党からも見られるように、『二面性』が好きだ。もしかすると、ブリジット夫人が、その哲学の影響を与えたのかもしれない」

【参考記事】下世話なメディアのマクロン夫人評
【参考記事】トランプ、仏マクロン夫人に痴漢発言「肉体的に素晴らしい」

キーワード3:共感力

「太陽のように明るく陽気な存在として国民から人気のブリジット夫人だが、その背景には、過去の悲しい事件があった。彼女が子供時代に、妊娠中だった姉が夫と交通事故で亡くなった。当時の彼女を知る人たちは、このときにブリジット夫人がよく笑う女の子になったと言う。子供だったブリジットは、悲しむ両親を元気づけたかったのだ。

その後、アミアンで教師をしていた頃も、親身な先生として慕われていた。夜や週末でも共感を持って、生徒の悩みに耳を傾けていたからだ」

キーワード4:情熱

「ブリジット夫人は、マクロン大統領の演劇の先生だった。教えることに熱意溢れる彼女は、演劇を見せるために生徒たちをパリまで連れて行った。また、18、19世紀の文学の知識を生徒に分かりやすく伝えた。そんな知性と熱意溢れる姿に、マクロン氏は惹かれたのだろう。マクロン大統領とも、演劇の台本の執筆に取り組んでいたそうだ」

キーワード5:愛情

「彼女はマクロン大統領をとても愛している。夫人の友人の話によると、毎日午前3時頃に就寝する大統領につきあい、相談に乗るそうだ。そして朝6時に起床する彼よりも、早く起きる。

そしてマクロン大統領のブリジット氏への想いは、愛だけでなく、尊敬が含まれている。彼女こそが、マクロン大統領の知性に大きく影響を与えた人物だからだ。昨年の大統領のキャンペーンでは、マクロン大統領はスピーチをする際、ブリジット夫人を目で追っていた。彼女は妻でありながら、コーチであり、アドバイザーだ。とくに、教育、健康、男女平等といった話題においては」


ayananishikawa-01.jpg[執筆者]
西川彩奈
フランス在住ジャーナリスト。1988年、大阪生まれ。2014年よりフランスを拠点に、欧州社会のレポートやインタビュー記事の執筆活動に携わる。過去には、アラブ首長国連邦とイタリアに在住した経験があり、中東、欧州の各地を旅して現地社会への知見を深めることが趣味。女性のキャリアなどについて、女性誌『コスモポリタン』などに寄稿。パリ政治学院の生徒が運営する難民支援グループに所属し、ヨーロッパの難民問題に関する取材プロジェクトなども行う。日仏プレス協会(Association de Presse France-Japon)のメンバー。
Ayana.nishikawa@gmail.com

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