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中年期の経済的失望に更年期...その先の女の人生って? 新著発表の『SATC』原作者インタビュー

Sex in the City, Again

2019年09月24日(火)19時30分
ニーナ・バーリー

──「カブ」は「クーガー」とは別物?

年配の女性が年下の男性を求める構図のクーガーは時代遅れ。カブ現象は正反対で、年下の男性が年配の女性に言い寄る。理由はいくつかあって、その1つはいわゆる熟女ものポルノや「セクシーな年上女性」というイメージにあると思う。

興味深いことに、年下男性にとって年配のセクシーな女性という存在はタブーじゃないし、変でもない。私たちは、一定の年齢を超えた女性が魅力的であり得るとか、年下男性を魅了できるという考え方と無縁だった。(それはあり得ないと)社会に刷り込まれてきたけれど、今はそれほど窮屈な時代じゃない。

──「カブ男子」に当てはまるのは20代の男性?

20代か、30代前半。この現象に初めて気付いたのは(出会い系アプリ)ティンダーの体験談を書いたときだった。冗談で、希望する年齢層をより若く設定してみたら、毎日3人とデートできるくらいの数のメッセージが30歳未満の子たちから来た。

──『SATC』の舞台である90年代のニューヨークを振り返りたい。あの頃の場所や社会の在り方で、取り戻したいと思うもの歯ある?

当時はある種の興奮があったと思う。いま振り返ると、無邪気さも存在したのかもしれない。私が懐かしいのはたぶん、しょっちゅう出掛けて友達と会っているという、あの感覚。今はそれがあまりない気がする。

──あれから#MeTоо(私も)運動が起きた。大物プロデューサーのハービー・ワインスティーンの性的暴行事件について、キャリーならどう考える?

その質問は「キャンディス・ブシュネルはどう考える?」と言い換えるべきだと思う。キャリーは私だったのだから。(『SATC』の)原作の根底にあった怒りは、女性たちが#MeTоо的な(セクハラが蔓延する)状況に置かれていた長い年月の産物だと断言する。

私がニューヨークにやって来たのは79年だった。興味深いのは、今なら#MeTооで告発されるはずの行為があの頃は常に起きていたということ。女性である私たちは、社会に教え込まれた。「できることなんてない。男とはそういうもの。受け入れられないなら、故郷に帰りなさい」と。それ以外の道はなくて、(セクハラは)職場の光景の一部だった。

──今はどう? 何らかの変化 を感じるか。

興味深いことだけど、女性の聴衆を前にしたときに、この2年ほどの間に職場で(セクハラを)経験した人はいるかと聞くと、手を挙げるのは年配の女性が1人か2人だけ。意識が高まっていて、根絶されてはいなくても、80年代ほど頻繁には起きていないように見える。

当時は本当にあからさまだった。私の場合、ニューヨークで仕事をするようになったときに一番幻滅したのが、多くの男性が性的行為を当然視していて、あらがうことはできないという事実だった。彼らの期待どおりにしなければ、仕事をもらえない。それが現実だった。

──新著には笑える挿話がある一方で、死もある。中年期に女性だけが味わう屈辱へのフラストレーションにも満ちている。

この年代の(男女間の)相違の1つが、男性は特別待遇を受けているということ。(同世代の女性より)選択肢が多いし、手にするお金も多い。これから家庭を持っても十分養っていける人なら、ずっと異性に求められる存在でいられる。

多くの研究によれば、女性は中年期になると経済的に弱い立場になったことに気付く。今から職に就こうと思っても、簡単にはいかない。

この問題には別の側面もある。美人で、自分の容貌を利用して生きてきた女性の場合、もうそれはできないと思い知らされる。そういう女性を軽蔑するのは簡単だけど、女性はそうやって生きていくよう、社会が促してきたわけでしょう?

──無視される存在になったと感じる?

ええ。それは一種のスーパーパワーとして捉えるべきだと思う。今では自分の存在に気付かれないまま、人が何についてどう言っているか、探り出せる。

年齢差別は確かにある。でもうれしいのは、今の中年女性はあちこちで活躍してきた女性たちだということ。80年代にオフィスや金融機関や法律事務所に大挙して進出して、90年代に自立したシングルとして生きていたのが彼女たち。少しばかり見過ごされているけれど、とても生き生きとした年代なの。


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※10月1日号(9月25日発売)は、「サバイバル日本戦略」特集。トランプ、プーチン、習近平、文在寅、金正恩......。世界は悪意と謀略だらけ。「カモネギ」日本が、仁義なき国際社会を生き抜くために知っておくべき7つのトリセツを提案する国際情勢特集です。河東哲夫(外交アナリスト)、シーラ・スミス(米外交問題評議会・日本研究員)、阿南友亮(東北大学法学研究科教授)、宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)らが寄稿。

[2019年9月17日号掲載]

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