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ナルシストと自己肯定感が高い人は似て非なり アメリカのミレニアル世代に見る「ほめる子育て」の落とし穴

2019年12月24日(火)17時50分
船津徹

子どもを過大評価している親は「親のナルシズムも大きい」という(写真はイメージ) DjelicS-iStock 

<変化の最中に生まれたアメリカのミレニアルズは「たっぷりほめられて育った」最初の世代。ただ、ほめ方を間違えると、自己肯定感が高い子ではなく、ナルシスト予備軍を生み出すことになりかねない...>

2020年大統領選挙を控えアメリカで注目されているのが、1980年代から2000年代初頭に生まれたミレニアル世代(Millennials)です。アメリカの全人口の3分の1を占めるミレニアル世代は、アメリカの政局を左右し、世界経済に大きな影響を与えると考えられています。

ミレニアル世代の多くはリベラルな価値観の持ち主です。環境問題や健康への関心が高く、LGBTQの賛同者であり、民主党(Democrats)支持が大勢を占めます。彼らが「左寄り」した原因の一つがグローバル化に伴う「格差の拡大」です。

グローバル化はアメリカ社会を国際競争に巻き込みました。企業はより安価な労働力を求めて生産拠点を海外へと移しました。その結果、産業と雇用の空洞化が起こり、米国民の大多数を占める中間層以下の所得が停滞したのです。

グローバル化の影響は教育にも波及しました。1980年代からアメリカの大学は国際競争力を強化するために教職員、設備、研究費、奨学金の充実化を推進しました。同時期に政府から大学に給付される助成金が減少したため、授業料は上昇の一途をたどり、多くの学生が多額のローンを抱えることになったのです。

2019年現在、アメリカの私立大学の年間授業料平均は4万1420ドル(約450万円)、州立大学は2万7120ドル(約300万円)です(US News)。2018年にアメリカの大学を卒業した学生の約70%が、平均3万ドル(約330万円)の借金を抱えた状態で社会人生活をスタートさせています(CNBC)。所得低迷と授業料高騰の重荷を背負わされたミレニアル世代は今のアメリカ社会に対し、強い「不公平感」を持っているのです。

ほめられて育ったミレニアル世代

経済面において厳しい洗礼を受けたミレニアル世代ですが、精神面においては結構甘やかされて育っています。1970年代までは、アメリカの子育てはキリスト教(聖書)の教えをベースとした「厳しくしつける」「悪いことをしたら罰を与える」が主流でした。

しかし1980年代以降、アメリカ社会が国際化・多様化するにつれ、子育ての方法も多様化していきました。さらに情報化によって子どもに厳しくすることの弊害や「科学的な子育て方法」が拡散されたことも相まって「厳しくしつける」は姿を消していったのです。

【参考記事】アメリカのミレニアル世代がいっこうに大人になれない裏事情

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