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あの「ニューヨーカー」誌の挿画家エイドリアン・トミネとは?

2022年06月24日(金)08時07分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
長距離漫画家の孤独

エイドリアン・トミネ『長距離漫画家の孤独』 Newsweek Japan

<日本でも一部熱狂的なファンが多い、伝説のグラフィック・ノベリストの「早すぎる自叙伝」。幼少の頃からの憧れの職業につき、はたから見れば順風満帆な芸術家の日々は「ごく普通」の悩みに溢れ、誰にとっても「あるある」で共感できる>

グラフィック・ノベリストのエイドリアン・トミネ。実際に彼の名前を知らなくとも、「ニューヨーカー」誌の挿画家、または映画「パリ13区」の原作者であると聞けば、うなずく人も多いのではないだろうか。


そのトミネが2020年に刊行した、話題の自叙伝グラフィックノベル『長距離漫画家の孤独』がついに邦訳刊行された。

1974年、カリフォルニア生まれのトミネは日系4世。カリフォルニア大学バークレー校出身で、子供の頃からの夢であった漫画家(本人はあくまで「グラフィック・ノベリスト」と主張)にもなり、はたから見れば順風満帆に見える。しかし、この「早すぎる自叙伝」には、私たちと同じ悩みや人間関係の細かな失敗が淡々と描かれている。

漫画好きでその知識量で周囲にドン引きされていた小学生時代、受賞スピーチを考えながら授賞式に臨んでいたのに名前が呼ばれなかったとき、自分の本ではない本にサインをねだられた気まずさ、憧れのDJのラジオ番組に出るために気合を入れて一人こっそり練習をしていたのに肝心な本番で記憶が飛んでしまったこと......。

何よりも彼の苗字であるトミネ(漢字表記は遠峯)が「トーマイン」「トゥ・ミ・ネイ」「トウミン」など常に正確には発音されず、毎度のこと(病院に運ばれても!)訂正し続ける「お約束」も、読み進めていくうちに、だんだん癖になってくる。

描かれている「あるある」や失敗には過剰な自虐も卑屈さもない。だから好感と共感をもって読み進めることができるのだろう。しかし、本書を読み始めているうちに、内容とは別に何点か気になってくることがある。

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