最新記事

軍事

インド海軍大国へのハードル

2009年8月24日(月)14時57分
アンドルー・バスト

 公海を制するのが大国の条件であるとしたら、経済成長著しいインドが海軍を増強しているのも驚くに当たらない。

 インド沿岸警備隊は8月8日、違法な積み荷を運んでいると思われた北朝鮮船籍の船を、国連制裁決議に基づいて拿捕した。この派手な海上活劇は、昨年11月にインド海軍がソマリア沖に出没する海賊の母船をアデン湾で撃沈した事件に続くものだ。

 インドは今後10年で軍艦を100隻増やす計画を発表。7月には初の国産原子力潜水艦の進水式を行った。「インドは本国から遠く離れた場所でも国力を誇示しようとしている」と、英軍事情報企業ジェーンズの海軍アナリスト、アレックス・ペープは言う。

 ただし海軍大国を名乗るには、まだ課題は多い。まず軍艦が老朽化していること。唯一の空母は50年代に建造されたもので、ロシアに発注した空母の完成は12年まで待たなければいけない。当初の計画から4年遅れており、費用は契約時の2倍の28億ドルに膨れ上がっている。

 さらに致命的なのは、造船のためのインフラが万全でないことだ。造船業を発展させて自国で軍艦を建造できるまでになった中国とは、その点が大きく違う。

 インドが海軍力を誇る日はいずれやって来るかもしれないが、それまではいくつもの荒波が待ち受けているようだ。

[2009年8月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニーG、9月30日時点の株主に株式5分割 上限2

ビジネス

ソニーGの今期、5.5%の営業増益見通し 市場予想

ワールド

社会保険料負担の検討、NISA口座内所得は対象外=

ワールド

米、中国関連企業に土地売却命令 ICBM格納施設に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中