最新記事

反政府デモ

エジプト危機その誤解と真実

ムバラク「勇退」でも騒乱は終わらない。アラブの未来をも左右するムスリム同胞団は穏健派か、混乱を呼ぶ過激派か

2011年2月9日(水)08時15分
クリストファー・ディッキー(中東総局長)
ババク・デガンピシェ(ベイルート支局長)

自由を! ムバラク支持派に食って掛かる反ムバラク派(2月2日、カイロ) Goran Tomasevic-Reuters

 エジプトの首都、カイロ中心部のタハリール広場に近い路地は血まみれだった。窮地を救ったのはムスリム同胞団だ──路地の入り口で、エンジニアで政治活動家のマムドゥーハ・ハムザ(63)はそう語った。「彼らが抵抗運動で果たした役割は重大だった」

 路地の程近くにある仮設の病院では、ホスニ・ムバラク大統領の退陣を求めるデモの参加者が治療を受けていた。デモ隊は先週、ムバラク支持派の集団と衝突した。多くの参加者が殴られ、刺され、銃撃され、火炎瓶を投げ付けられて傷を負った。

 それでも、デモ隊は踏みとどまった。すべてはムスリム同胞団の増援のおかげだ、とハムザはタハリール広場の群衆を見渡して言う。「ここにいる人々の約4割がムスリム同胞団のメンバーだ。彼らは非常に大きな要素になった」

 となれば、大きな疑問が浮かび上がる。彼らの重要性はどこまで拡大するのか。

 イスラム原理主義を根幹とするムスリム同胞団は、エジプトの国内外で不安の的になっている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は先週、議会で行った演説でエジプト情勢に触れ、イランのイスラム革命を引き合いに出した。79年に起きたこの革命で、イランはイスラム神権体制の国になり、イスラエルの頼りになる友人から最も危険な敵に変貌した。...本文続く

──ここから先は『ニューズウィーク日本版』バックナンバー 2011年2月16日号のカバー特集「エジプト危機 誤解と真実」をご覧ください。
<デジタル版のご購入はこちら
<iPad版、iPhone版のご購入はこちら
<定期購読のお申し込みはこちら
 または書店、駅売店にてお求めください。

カバー特集では他にも
─アラブの人々の「怒りの雪崩」と独裁者の運命をディープに占う
■「独裁者の時代が歴史になる時」
─中東に「本物でない」民主主義が台頭することを懸念するイスラエル人教授のコラム
■「自由の夢、イスラエルの悪夢」
など多角的に「中東革命」を掘り下げます。

併せて
■「iPad新聞の敵はマードック」
■「オスカー俳優の本音が大暴走!」
もどうぞ!
<最新号の目次はこちら

[2011年2月16日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポーランドのトゥスク首相に脅迫、スロバキア首相暗殺

ビジネス

フォード、EV収益性改善に向けサプライヤーにコスト

ワールド

米、大麻規制緩和案を発表 医療用など使用拡大も

ビジネス

資本への悪影響など考えBBVAの買収提案を拒否=サ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 6

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 7

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 8

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中