最新記事

バーチャルリアリティー

バーチャル・ポルノがリアルな市場に:2025年の推計値は10億ドル

VRヘッドセットが大手から続々登場。アダルトとの親和性が勝者を決める?

2016年1月29日(金)16時30分
高森郁哉(翻訳者、ライター)

VRポルノ 米国のVRアダルトコンテンツ市場は、急拡大しそうだ。(写真はVRヘッドセットを試す人々 YouTube から)

 フェイスブック傘下のオキュラスが仮想現実(バーチャルリアリティ:VR)ヘッドセット「Rift」を599ドルで予約受付を開始し(出荷は3月28日から)、ソニーも「プレイステーション4」に対応するVRシステム「プレイステーションVR」を今年上半期に売り出すなど、VR関連の話題がにわかに盛り上がってきた印象だ。しかし、米国の調査会社によると、VRポルノは昨年から既に急成長しており、近い将来にはVRコンテンツ市場の中で3番目の規模になる見込みだという。

 SimilarWebは、2015年のVR市場の動向を調査したレポートの中で、新興のVRアダルト業界は昨年大きく成長したと指摘。VRポルノを専門とする10サイトへの世界からのトラフィックを調べたところ、1月から11月までで202%増加し、ピークだった10月には324万件のアクセスがあったという。

 また同期間で、オキュラスのサイトが全体のトラフィックのうち16.7%が参照リンクからで、そのうち2.7%がVRポルノサイトからだった。同様に、「Homido」という競合製品のサイトでは、トラフィック全体の27.6%が参照リンクから、そのうち51.4%に相当する約8万2000件のアクセスが「virtualrealporn.com」だけから送られたという。こうした傾向から、SimilarWebは「VRヘッドセットの勝者は、ポルノが決めるかもしれない」と述べている。

VRヘッドセットを試す人々
.

 VentureBeatはSimilarWebの調査結果を引用したうえで、今年のどこかの時点でRift、プレイステーションVR、それにHTCの「Vive」(2月末に米国で予約開始、価格未発表)が出揃ったとき、ソニーのヘッドセットが競合2製品よりも不利になると予想している。Riftはオープンなプラットフォームで、Viveも詳細は未定ながら、PC上で動作するソフトが開発可能になるとみられる。これに対し、ソニーはPS専用のデバイスであり、ソニーに承認されたソフトしか動作しないため、VRのアダルトコンテンツは排除される可能性が高いというわけだ。

 他方、別の調査会社Piper Jaffrayは、米国のVRアダルトコンテンツ市場は、2016年に1300万ドル、2025年には10億ドルの規模に拡大するとの推計値を示した。2025年の規模で他のVRコンテンツカテゴリーと比較すると、1位のビデオゲーム(14億ドル)、2位のNFL(12億3000万ドル)に続き、アダルトは3位になるとみている。

 これまでも、コンシューマー向けの新しい映像関連技術が普及する上で、アダルトコンテンツの利用者がアーリーアダプターとして大きな役割を果たしてきた。また、VHS対ベータマックス、Blu-Ray対HD DVDのように、競合する技術が同時期に登場したときには、ポルノが新しいプラットフォームの確立に貢献してきたとする見方もある。VRヘッドセットの普及に関しても、アダルトコンテンツとの親和性が影響することは間違いなさそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

円が対ドルで5円上昇、介入観測 神田財務官「ノーコ

ビジネス

神田財務官、為替介入観測に「いまはノーコメント」

ワールド

北朝鮮が米国批判、ウクライナへの長距離ミサイル供与

ワールド

北朝鮮、宇宙偵察能力強化任務「予定通り遂行」と表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中