最新記事

中東

ノーベル平和賞のチュニジアにISISの魔の手が

2016年2月17日(水)16時00分
アレッサンドリア・マシ

 仕事があっても大半は収入が低く、米ドル立てで給料を払うテロ組織のほうがはるかに魅力的だ。スースに住むワエル(19)のいとこは14歳で学校をやめ、家計を助けるためにホテルの土産物店で働き始めた。しかし、ISISに入れば家族に1500ドルが送金されると聞き、間もなくシリアに渡った。

【参考記事】ISISの国庫をむしばむ「納税者」大脱走

 テロ組織の側も、若者の高い失業率が勧誘に有利に働くことは承知しており、経済にさらなる打撃を与えようとしている。観光がGDPの約6分の1を占めるチュニジアで、昨年3月と6月に観光客数十人が殺害されるテロ事件が発生。いずれもISISが犯行声明を出している。

「過激派武装集団のプロパガンダのために選んだ標的というだけでない。博物館やホテルを襲撃すれば観光客は確実に減る」と、シンクタンク「大西洋協議会アフリカセンター」のピーター・ファム所長は言う。

 若者の就職先がテロ組織しかないような国に、「春」はまだ訪れそうにない。

[2016年2月16日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン大統領と外相が死亡、ヘリ墜落で 国営TVは原

ビジネス

EVポールスター、ナスダックが上場廃止の可能性を警

ワールド

仏当局、ニューカレドニア暴動はアゼルバイジャンが扇

ワールド

頼清徳氏、台湾新総統に就任 中国に威嚇中止を要求
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中