最新記事

中国社会

中国のビール市場が成熟化、「高級」や「こだわり」の商品に人気

海外のプレミアムビールが人気を集め、小規模なクラフトビール生産者にも商機

2016年3月7日(月)14時05分

3月7日、中国人消費者の「高級」や「こだわり」志向がビールにも波及し、海外ブランドや個性豊かなビールを提供する小規模醸造業者が中国に新たな商機を見出す動きもある。北京の地ビールを提供するパブで6日撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 中国人消費者の「高級」や「こだわり」志向がビールにも波及し、海外ブランドのプレミアムビールが人気を集め、手作りで個性豊かなクラフトビールを提供する小規模醸造業者が中国に新たな商機を見出す動きも広がりつつある。

大手ビール各社にとって、中国は重要な市場だ。昨年は世界全体の出荷の伸びの半分を中国が占めた。ただ、ドイツ銀行のアナリストの試算によると、ビール会社が世界全体で稼いだ利益のうち中国が占める割合はわずか3%で、今後利益を拡大していかなければならない。

ラボバンクで上海を拠点とするアナリスト、キャサリン・ソン氏は「これからはプレミアムビール部門が大事な戦場になる。なぜならこの部門こそが主たる利益のけん引役だからだ」と指摘した。

先週には英SABミラーが香港上場の華潤ビール<0291.HK>に華潤雪花ビールの株式49%を予想外に低い価格で売り払うと発表した。これはアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)が英SABミラー買収について中国当局から承認を得るための資産売却の一環だが、もう1つ重要なポイントはSABミラーが中国でより魅力のあるプレミアムビール事業に専念できるようになったことだ。

中国のビール市場におけるプレミアムビールの割合は2010年に10%足らずにすぎなかったが、2019年末には33%を超えると予想されている。

昨年の中国の消費者による海外高級ビールの輸入額は、60%増加した。

<ステータスシンボル>

こだわりという面では例えば、中国中央部の武漢市でバーを経営するChen Jiaqiさんは、わざわざ飛行機で640キロメートルも離れた上海まで行って、ニュージーランドのクラフトビールを試飲するほどだ。

Chenさんは「ビールの味自体の好みにうるさい中国の顧客はどんどん増えていると思う。あるビールが個性的で希少であるなら、それが選ばれる」と話す。

少量で手をかけて生産するクラフトビールは当然値段が高い。上海でクラフトビールは1びん当たり30元(4.6ドル)前後で、最も安い量産品の10倍を超える。

それでも上海の繁華街にあるクラフトビールのバーで独バイエルン州産のホワイトビールを飲んでいたある看護師の女性は「このビールは特殊でより味わいが深い。余分なお金を払う価値がある」と述べた。

こうした流れを受け、スコットランド・ブリュードッグやニューヨークのブルックリン・ブルワリーといった小規模醸造所が積極的に中国市場に照準を定め始めている。

イングランド北部で「ハンギングストーン」や「ホーリーカウ」などのブランドでクラフトビールを生産しているイルクリー・ブルワリーのディレクター、ルーク・レイベン氏は「中国は近いうちに対応すべき市場のリストに載っている」と語った。

クラフトビールはだれもが好む商品ではないが、その他大勢とは違うところを見せるために積極的にお金を払おうとする中国の消費者の行動は、バドワイザーやハイネケン、日本のアサヒといった大手輸入ブランドの販売も下支えしている。

ユーロモニターの調査によると、昨年の中国のビール市場は全体で7.5%成長したのに対してプレミアムビールの伸びは25%に達した。

中国の消費者がハイネケンやカールスバーグなどのプレミアムビールを選ぶのは、スターバックスでコーヒーを飲むのと同じで一種の「ステータスシンボル」になっているとの声も聞かれた。

(Adam Jourdan記者)

[上海 7日 ロイター]

120x28 Reuters.gif
Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ハリコフ攻撃、緩衝地帯の設定が目的 制圧計画せずと

ワールド

中国デジタル人民元、香港の商店でも使用可能に

ワールド

香港GDP、第1四半期は2.7%増 観光やイベント

ワールド

西側諸国、イスラエルに書簡 ガザでの国際法順守求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中