最新記事

朝鮮半島

北朝鮮ミサイル発射に中国はどう対処するのか?

2016年3月21日(月)22時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

北朝鮮軍の演習を視察する金正恩第一書記 KCNA-REUTERS

 米韓合同軍事演習に合わせて、北朝鮮が新たにミサイルを発射するなど暴走が止まらない。この事態を中国はどう受け止め、どう行動しようとしているのか? 中国政府関係者を単独取材した。

中国政府関係者の回答

 北朝鮮は3月18日、ノドンと見られる中距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射。21日にも、ミサイルかロケット弾とみられる5発を発射した。日本の自衛隊もいざという時に備えて行動しているようだ。中国の外交部報道官も非難声明を出している。

 3月18日、陸慷外交部報道官は、「北朝鮮のミサイル発射等の問題に関して、国連安保理決議は明確な規定を出している。中国は北朝鮮が安保理の関連決議を順守することを要求する」と定例記者会見で言った。

 これに関して、もう一歩踏み込んだ中国側の考え方を知りたいと思い、中国政府関係者を単独取材した。

 彼は以下のように述べた。

1. 中国の公式見解は外交部報道官が述べた通りだ。

2. 以下はあくまでも私個人の意見だが、18日に韓国の朝鮮半島和平交渉本部長である鉷均が訪中していることに注目してほしい。

3. 先般の王毅外相と岸田外相が電話会談したことに続いて、いま何が起ころうとしているかが見えてくるだろう。

4. 中国はあくまでも国連安保理決議を遵守するよう関係各国に求めており、アメリカの「単独制裁」に反対する。アメリカのこの単独行動は、やがてリビアやイラクにおいてアメリカが単独に行なった行動が中東情勢を混乱に陥らせているのと同様に、東アジアを取り返しのつかない方向へと導いていく。そのことを最も警戒している。

あくまでも6者会談

 以上の中国政府高官の「個人的見解」を、もう少し詳細に紐解いてみよう。まず「1」~「3」の内容に関して論じる。

 3月16日付け本コラム「王毅外相はなぜ岸田外相の電話会談を承諾したのか?」で、その背後に王毅外相が全人代を途中欠席してまで急遽モスクワに飛びラブロフ外相(やプーチン大統領)と会談したことを書いた。

 今度は武大偉・朝鮮半島問題特別代表が韓国の金鉷均・朝鮮半島和平交渉本部長を緊急に招聘して北京で6者会談(6ヵ国協議)に関して話しあっている。これはこのたびの対北朝鮮国連安保理決議後、初めての中韓間の6者会談関係者の会談である。

 ということは、中国はひたすら何とか6者会談に持っていこうとしていることが見えてくる。

アメリカの単独制裁は東アジアに第二のIS情勢を生む

 中国政府はアメリカの韓国における史上最大規模の米韓合同軍事演習を「北朝鮮に対するアメリカの単独制裁だ」とみなしている。

 それは中国メディアが、3月17日に発表されたロシアのマリア・ザハロワ外交部報道官の言葉を借りて、アメリカを非難していることからも鮮明に見えてくる。その報道によれば彼女は次のように言っているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加支援で供与の可能性

  • 4

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 5

    過去30年、乗客の荷物を1つも紛失したことがない奇跡…

  • 6

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカ…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 9

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中