最新記事

欧州債務危機

ギリシャ債務合意、ラガルドの剛腕がIMF動かす

2016年5月31日(火)10時55分

 5月27日、国際通貨基金(IMF)が折れ、支援枠組みへの参加に前向きな姿勢に転じる上で決定的な役割を果たしたのは、協議の場にいないラガルド専務理事だった。写真は、ワシントンで開催された国際通貨基金・世界銀行年次総会の春季会合で演説するラガルド専務理事。4月撮影(2016年 ロイター/Yuri Gripas)

 欧州連合(EU)のユーロ圏財務相会合は25日、未明に及ぶ長時間協議の末にギリシャの債務軽減で合意したが、ユーロ圏にギリシャ債務減免を強硬に求めていた国際通貨基金(IMF)が折れ、支援枠組みへの参加に前向きな姿勢に転じる上で決定的な役割を果たしたのは、協議の場にいないラガルド専務理事だった。

 IMFはギリシャの債務は持続不可能だと主張し、ユーロ圏がギリシャ債務を再編しない限り第3弾となる今回の支援枠組みに加わらない方針を示していた。一方、ドイツのショイブレ財務相など一部のユーロ圏当局者は、モラルハザードを引き起こしかねないとして債務減免を拒否していた。

 ユーロ圏の複数の当局者によると、協議ではIMF内部でトムセン欧州局長と他の当局者がいつになく緊迫したムードに包まれ、意思の疎通が難しくなっていることに驚かされたという。特に合意を最終的に受け入れる前に、トムセン局長がラガルド専務理事に連絡を取るのに数時間も待たされたのが目を引いた。

 また別のユーロ圏当局者によると、協議場の外の廊下で専務理事と10分間の詰めの電話協議を行ったトムセン局長は「苛立っているようにみえた」。局長は合意の受け入れに反対したが、意見が通らなかったようだったという。

 IMF当局者は、対応が遅れたのはカザフスタンを訪問中のラガルド専務理事と連絡を取るのに手間取ったのが主な理由だと説明。協議の前に事前の調整を行っており、「専務理事は欧州局長の立場を全面的に支持している」として、ラガルド氏とトムセン氏の間で意見対立があったとの見方を否定した。

 ユーロ圏は、ギリシャはユーロ圏に加盟しており破綻を回避することはできるとして、IMFに債務減免について甘い扱いを求めている。またIMFの対ギリシャ融資の返済についても、それほど懸念する必要はないと主張している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノババックス、サノフィとコロナワクチンのライセンス

ビジネス

中国高級EVのジーカー、米上場初日は約35%急騰

ワールド

トランプ氏、ヘイリー氏を副大統領候補に検討との報道

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、3週連続減少=ベーカー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 7

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中