最新記事

イギリス

「国民投票は後悔しない」──去りゆくキャメロンに満場の拍手

2016年7月14日(木)16時40分
ジョシュ・ロウ

家族と共に首相官邸に別れ Peter Nicholls--Reuters

<EU離脱をめぐる国民投票をすると言い出した張本人のキャメロン英首相が昨日、退任した。「戦犯」扱いだったが、英議会での最後の質疑応答は概ね好意的だった。確かに民主主義は貫いた。「国益に資した」かどうかは、イギリスがこれから答えを出す>

 デービッド・キャメロン前英首相は13日、下院本会議で首相として最後の質疑応答を終え、満場の拍手に送られて議場を後にした。去りゆく首相は「かつて私は(イギリスの)未来だった」が、もう出番は終わったと語り、次期政権にエールを送った。

 議場の怒号を浴びられなくなるのは寂しいが、今後は一下院議員としてメイ政権を盛り立てていくという。

 キャメロンが前回の総選挙で単独過半数を取るために国民投票の実施を公約に掲げたせいで、イギリスはEUを離脱することになった──残留派の間では今もそんな怒りがくすぶっているが、最後の質疑応答でキャメロンの責任を厳しく追及したのは、イギリスから独立してでもEUに残留したいスコットランドの議員団だけだった。

【参考記事】EU離脱派勝利が示す国民投票の怖さとキャメロンの罪
【参考記事】英EU離脱投票:暴走するワーキングクラスの怒り

 キャメロンは、指導者の責任を手加減せずに追及するイギリスの議会制民主主義は素晴らしいと言い、この伝統を「堅持する」よう議会に呼び掛けた。「公務において最終的に問われるのは国益に資したかどうか、それがすべてだ」

同性婚を合法化

 野党・英労働党のジェレミー・コービン党首もこの日は追及の手を緩め、同性婚の合法化とグアンタナモ収容所にいた最後のイギリス市民、シャケル・アーメルの釈放を勝ち取ったのはキャメロンの功績だと、はなむけの言葉を贈った。

 一方コービンは、間もなく次期首相に就任するテリーザ・メイ内相が強欲な企業幹部を批判し、多くのイギリス人は経済成長の恩恵を実感していないと述べたことを引き合いに出し、キャメロン政権下で格差が拡大したと苦言を呈することも忘れなかった。「実に多くのイギリス人が生活破壊にあえいでいる、という彼女の発言は正しいのではないか」と、コービンは問い掛けた。

【参考記事】次期英首相テリーザ・メイは「冷たい女」?

 キャメロンはこれに対し、最低賃金を引き上げたこと、繁忙期のみに業務委託する「ゼロ時間契約」の排他条項を禁止し、非正規の労働者が掛け持ちで働けるようにしたことを挙げて、労働分野での業績をアピールした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

SBG、投資先のAI活用で「シナジー効果」も=ビジ

ワールド

米国務副長官、イスラエルの「完全勝利」達成を疑問視

ビジネス

武田薬、認知症治療薬候補でライセンス契約 最大21

ワールド

トランプ氏が不倫口止め料支払いを個人的に指示、元顧
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 8

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 9

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中