最新記事

イタリア

お騒がせ元首相のベルルスコーニが80歳でついに諦観?

2016年10月12日(水)10時30分
カビタ・スラナ

Alessandro Bianchi-REUTERS

<あれだけイタリア政界をひっかき回したベルルスコーニ元首相が、80歳の誕生日を迎えて一番後悔しているのは、なんと「ACミランを強化できなかったこと」>(写真は、今年5月のローマ市長選で応援演説するベルルスコーニ)

 イタリア政界でもビジネス界でもスキャンダルの世界でも「精力的」に活動し続けた彼が、ついに引退か。

 先週、イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ元首相が80歳の誕生日を迎えた。それを記念して行われたインタビューからは、彼が20年以上立ち続けた政界の表舞台から身を引きそうな雰囲気がひしひしと伝わる。

「人生において、年齢を気にしたことなど一度もなかった。いつでも40歳のつもりで生きてきた」と、ベルルスコーニは自ら所有するメディアの1つであるゴシップ誌「Chi」で語った。「だが病気になって手術を受け、強烈に自覚するようになった。私は80歳の老人なのだと」

 メロドラマ張りの性スキャンダルや他国の首脳相手でも躊躇しない粗野なジョークで悪名をはせたベルルスコーニは、5人の子供と10人の孫、それに31歳のガールフレンドと一緒に80歳の誕生日を静かに祝った。ロシアの親友ウラジーミル・プーチン大統領からバースデーコールも受けたらしい。

【参考記事】先進国イタリアの大惨事は腐敗と無能による人災?

 長年、政界で実力者として君臨しながらも、脱税事件で13年に有罪が確定し、2年間の公職停止に。以降は脇役に追いやられており、今年の夏に心臓手術を受けたこともそれに拍車を掛けた。

 だがベルルスコーニは、むしろ自らの消えゆく政治的影響力を気楽に静観しているようだ。「政治に情熱を傾けたことは一度もない」と、彼は言う。「政治がしてくれたことといえば、私から途方もない時間とエネルギーを奪ったことくらいだ」

 大炎上を起こした乱交パーティー「ブンガブンガ」は、ベルルスコーニの後悔度ではトップに上るように思える。少女買春と職権乱用で11年に起訴されると、彼の人気は急降下した(この事件は14年に無罪判決が出た)。

 だが実のところ、一番後悔しているのはサッカーだと、ベルルスコーニは語った。所有するサッカーチーム、ACミランの強化に十分力を入れられなかったことが悔やまれるという。同チームは今年7月、中国の企業連合に売却された。

「ここ数年のACミランに以前の強さがなかったのだとしたら、それは私が個人的に力を割けなかったからだ」とし、スキャンダルをめぐる捜査に時間と労力を奪われたせいだとぼやいた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上

ワールド

シンガポール航空機かバンコクに緊急着陸、乱気流で乗
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中