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日米関係

トランプ政権の対日外交に、日本はブレずに重厚に構えよ

2016年11月10日(木)19時30分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

 最悪なのはトランプ政権の登場を恐れ、トランプ新政権との間に人脈を慌てて築いたり、適任ではない人間を窓口にしたり、要するにアメリカの「内向き志向」に振り回されつつ、風下に立つような外交だ。これでは日米関係を損なうだけだ。

 アメリカ側で一つ懸念事項となるのは、アメリカの保守派の間に「反日」の兆候が少しだけ見られることだ。トランプの一貫した「反日放言」に加えて、これはオバマ大統領の広島訪問という大事件への「反動」という要素も指摘できる。保守派の人気キャスター、ビル・オライリーの著書『ライジングサンを殺せ』という本が売れているのがいい例で、日本は下手に振る舞うと「悪者」にされる危険性があることは事実だ。

 復古主義や、特に第2次大戦史観への歴史修正的な言動は、政権周辺を中心に厳しく封印しなければならない。今は、それが許される時期ではない。共和党は親日という甘えは、この新政権と現在の状況には通用しない。

 国際情勢においては、自由主義と自由経済を中心にG7の価値観からブレないことで、欧州やカナダと協調し、一方ではアメリカに見え隠れする反日の動きのターゲットとされるようなスキを見せないというのは別に「危険な綱渡り」ではない。

 伊勢志摩サミットで見せた、そしてオバマ大統領の広島訪問という成果を生んだ、核不拡散とそして自由陣営の価値観を基軸に、ブレない重厚な姿勢が今の日本外交にとっては重要だ。

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