最新記事

米政治

ゴルフ場に墓石を使うトランプは中国と似ている

2016年11月25日(金)18時48分
譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)

 トランプ氏が次期アメリカ大統領に選出された直後、日本の安倍首相はいち早くニューヨークへ駆けつけて会見を実現させ、「互いに信頼関係を築いた」と自信をみなぎらせた。

 互いにゴルフ好きなことから、安倍首相は50万円以上もするゴルフのドライバーをトランプ氏に贈り、お返しにゴルフ・ウェアをもらったともいう。

【参考記事】安倍トランプ会談、トランプは本当に「信頼できる指導者」か

 今後、ふたりが共通の趣味であるゴルフを一緒に楽しむ機会があれば、トランプ・ゴルフ場に招待された安倍首相が、満面笑顔で墓石を踏んで歩く姿が見られるかもしれないと想像させた。

 だが11月21日、トランプ次期大統領は突如、来年1月20日の大統領就任日に、環太平洋経済連携協定(TPP)から脱退することを、動画サイト「ユーチューブ」を通じて明言した。「我が国にとって災いとなりうる」という理由からだ。

 このニュースは、保護主義を懸念するTPP加盟予定の各国に大きな衝撃をもたらしたが、ほんの数日前に「互いに信頼関係を築いた」と言い切った安倍首相にとっては、さらに大きな衝撃となり、裏切られたと受け取ったかもしれない。

 来年以降、トランプ大統領率いるアメリカの国家戦略は、未だはっきりとは見えてこない。選挙戦で公約したことを、どの程度実施しようとするかも不確定だ。「トランプ降ろし」が背後で着々と進んでいるという話もある。

 日本は、現状に一喜一憂して慌てて対処するよりも、自国の理念をしっかりと腹に据えて、揺るがぬ意志でじっくり対応すべきときではないだろうか。

[執筆者]
譚璐美(タン・ロミ)
作家、慶應義塾大学文学部訪問教授。東京生まれ、慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(ともに新潮社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『江青に妬まれた女――ファーストレディ王光美の人生』(NHK出版)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション!――日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、その他多数。新著は『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

オーストラリア政府、インフレ抑制の目標達成時期繰り

ビジネス

英賃上げ率、今後1年は4%の見通し=雇用主調査

ワールド

北朝鮮、米同盟国による監視を批判

ビジネス

中国碧桂園、オンショア債利払い履行 猶予期間内
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中