最新記事

報道写真

写真が語る2016年:ISから解放されてベールを脱ぐシリア女性

2016年12月25日(日)10時32分

12月6日、過激派組織「イスラム国(IS)」の支配から解放された女性は黒いベールを脱ぎ捨て、笑顔を見せた。シリア北部アレッポ県で6月撮影(2016年 ロイター/Rodi Said)

シリア北部アレッポ県で6月、米国が支援するシリア民主軍(SDF)が、過激派組織「イスラム国(IS)」から、マンビジ郊外の村を奪還した。解放された女性は黒いベールを脱ぎ捨て、笑顔を見せた。

2016年を象徴する一連の写真について、ロイター・カメラマンが撮影当時の様子を語る。

撮影したカメラマン:Rodi Said

シリア民主軍がISから村を奪還すると、19歳のソウアド・ハミディさんは、2014年から着用を強制されていた、顔を覆うニカブを脱ぎ捨て笑顔を見せた。

「解放された気分」。黒色のベールから赤色のヘッドスカーフに着替え、ハミディさんはこう述べた。「意思に反して着用させられていた。だから、わざとこんなふうに取ってやったの」

SDFが奪還した村を訪れた私は、ちょうど自宅に戻ってきたハミディさんと出会った。

Am Adasa村は2014年以降、ISの支配下にあった。服装規定など、生活は厳しく規制されていた、とハミディさんは語る。

「彼らのルールに従わない人は罰せられた。墓穴に何日も閉じ込められる人もいた」とハミディさんは言う。

「(SDFが)村を奪還してから、私たちの生活は一変した」

実家で話をしてくれたハミディさんは、いまだにISがいつか戻って来るのではと気が気でないという。

「記憶からダーイシュ(ISのアラビア語名)を消し去ってしまいたい」とハミディさんは語る。「ダーイシュが支配するすべての地域が解放されることを願っている。人々が自由を取り戻し、現在の私たちのように生活できるようになることを」

この写真は、ハミディさんの強さ、そして強制されていた暗闇から取り戻した自由を表現していると私は思う。宗教的迫害の恐怖を乗り越えた瞬間なのだ。



[6日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=上昇、ナスダック最高値 CPIに注目

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、PPIはインフレ高止まりを

ビジネス

米アマゾンの稼ぎ頭AWSトップが退任へ

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収を「再考」か=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中